日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
EVAR導入前後におけるAAA患者背景因子変化についての検討
古谷 光久青木 淳末澤 孝徳山本 修櫻井 淳
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キーワード: 腹部大動脈瘤, EVAR, 背景因子,  
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 22 巻 1 号 p. 7-11

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抄録
要  旨:【目的】腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)は低侵襲であり,高リスクの患者にも施行可能と考えられる.当院でのEVAR導入前後の患者背景について検討した.【方法】2000年1月~2010年12月に当院で経験した腹部大動脈瘤328例中,待機手術症例293例をEVAR導入前(pre群180名)と導入後(post群113名)に分け,年齢,冠疾患,脳梗塞の有無,杖歩行以下のADLの低下など背景因子を比較した.Post群を開腹症例(post-open群32名)とEVAR症例(EVAR群81名)に分け,同様に比較した.破裂症例は35例であり,EVAR導入前後での症例数変化を検討した.【結果】Pre,post群間では,年齢には差がなく,冠疾患(28.3%,43.4%),脳梗塞の既往(9.4%,21.2%),ADLの低下(1.1%,14.2%)はpost群に多かった(いずれもp<0.05).Post-open,EVAR群間では,冠疾患,脳梗塞の既往には差はないが,年齢(69.2歳,76.2歳,p=0.005),ADL低下(0%,19.8%,p<0.0001)に有意差を認めた.術後死亡率は三群間で差を認めず,術後入院日数はEVAR群(10.6日)がpre群(20.4日),post-open群(18.1日)より有意に短かった(いずれもp<0.001).破裂症例の割合は,導入前12%,導入後8%と,減少傾向はあるが有意差はなかった.【結論】EVAR導入後は高リスク症例が増加したが,死亡率は増加しなかった.EVARの普及により,将来破裂症例が減少することが期待される.
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