2013 年 22 巻 1 号 p. 45-48
要 旨:症例は77歳男性で,腎動脈下腹部大動脈に55 mm大のAAAを認めた.陳旧性心筋梗塞,重度糖尿病,診断未確定胸膜腫瘤を合併していた.全身麻酔下にまず仰臥位にて大腿動脈経由にEVAR(Gore Excluder®)を行い,次に右側臥位として胸腔鏡下胸膜生検を行った.EVARに際して手技上困難な点はなく,全手技を通じて血圧低下などの循環動態不安定な時期はなかった.ICUに入室後抜管し,直後より対麻痺を認めた.緊急髄液ドレナージ,ステロイドパルス,昇圧などを行ったが改善は得られなかった.術後CTでは大動脈解離の所見はなく,endoleakは認めなかった.また,右腎上極および下極外側に梗塞を認めた.術後のMRIではTh12レベル以下の脊髄円錐の腫大,脊髄内の異常信号上昇があり,脊髄梗塞の所見であった.胸膜腫瘤の病理組織診断は肺大細胞癌の胸膜播種であった.