2013 年 22 巻 4 号 p. 725-727
要 旨:症例は68歳男性.主訴は食思不振.糖尿病の合併以外に感染や外傷の既往は認めなかった.CT検査にて,総肝動脈を圧排し膵臓と接する最大短径40 mm大の腹腔動脈瘤を認めた.胸部や腹部大動脈,ならびに他の内臓動脈に動脈瘤の併発はなく孤立性動脈瘤であった.術前選択的動脈造影検査で肝臓への側副路となる胃十二指腸動脈の流量が不十分で,血管内治療(塞栓術)の適応は臓器灌流障害を来す危険性が高いと判断し,瘤閉鎖術に加えて大伏在静脈を用いた脾動脈-総肝動脈バイパス術を同時に施行した.病理組織学的検討では,感染などの所見はなく真性瘤であり,動脈硬化性変化のみであった.術後経過は問題なく,術後24日目に軽快退院となった.動脈硬化に起因する孤立性腹腔動脈瘤は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.