日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
マルファン症候群の心血管病変への再手術
坂本 滋坂本 大輔
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2013 年 22 巻 4 号 p. 709-714

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抄録

要  旨:【目的】マルファン症候群の心血管病変の予後は不良で,大動脈解離や瘤の再発を起こし,再手術が必要となる.この再手術例の成績,治療方針,および当科で経験したマルファン症候群の遠隔期成績を検討した.【対象と方法】2012年4月までに,臨床的にマルファン症候群と診断した22例のうち,再手術を施行した9例を対象とした.初回手術時の年齢は平均47.3±12.6歳で,心血管病変は,AAE 2例,AAE+AR 7例,Stanford A型解離4例,Stanford A型解離+AAE 6例,Stanford B型解離3例であった.手術はBentall手術12例(+弓部大動脈置換7例),Cabrol手術3例(+弓部大動脈置換1例),AVR 2例(+解離腔閉鎖1例),弓部大動脈置換1例,David手術2例(+弓部大動脈置換1例),胸部下行置換2例,Yグラフト置換1例であった.このうち,複数回の手術が必要であった症例は9例(41.0%),22回の手術を施行した.1例には4回の手術,2例には3回の手術を施行した.同一部位の反復手術は4例(冠動脈瘤の再発1例,ARの進行3例),追加手術は5例(新たな解離発生2例,AAE進行3例)であった.【結果】マルファン症候群の心血管病変で再手術を施行した症例の手術成績は手術死亡1例(11.1%)で,グラフト感染であった.他の8例は生存している.当科で経験したマルファン症候群22例の手術死亡は3例(14.3%),術後のCVA 1例,グラフと感染1例,出血によるMOF 1例であった.遠隔期死亡は2例,それぞれCVA,肝癌であった.累積生存率は10年で64.3%,累積再手術回避率は10年25.0%であった.【結語】再手術の原因は解離,動脈瘤の再発であった.病変を残すことが再発に関連があり,反復手術や追加手術となるため,積極的な予防的手術が再手術を減少させるものと考えられた.初回で基部置換+弓部置換の拡大手術,あるいは再手術を考慮した Elephant trunkおよび Reverse elephant trunkなどを選択することが追加手術,術後合併症を減少させるものと考えられた.さらに,マルファン症候群の手術例は厳重な術後経過観察と,その家族も含めた定期的な経過観察も重要であると考えられた.

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