日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
膝窩動脈以下の病変に対する重症虚血肢の治療—血管内治療vsバイパス術
正木 久男田淵 篤柚木 靖弘渡部 芳子三村 太亮古川 博史山澤 隆彦本田 威滝内 宏樹種本 和雄
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 22 巻 4 号 p. 715-718

詳細
抄録
要  旨:【目的】膝窩動脈以下の病変を有する重症虚血肢に対して血管内治療を行うかあるいはバイパスを行うかを明らかにする.【対象および方法】1995年5月から2011年6月までに当科で膝窩動脈以下の病変に対して血管内治療ないしバイパスを施行した150例164肢を対象として,術式別に治療成績を検討した.血管内治療の適応は,1.全身状態が不良,2.5 cm以下の狭窄ないし閉塞病変を対象とした.【結果】バイパス群(B)は119例131肢,年齢46~89歳,平均70歳,男性99例,女性20例で,血管内治療群(E)は31例33肢,年齢は47~89歳,平均72歳,男性25例,女性6例で両群間に有意な差はなかった.術前合併症は,B群,E群でそれぞれ高血圧54%,61%,糖尿病36%,55%,透析29%,58%,虚血性心疾患27%,32%,脳血管障害18%,23%で透析が占める割合がE群のほうが有意に高値であった.病院死亡率はB群1例(0.8%),E群は0%であった.一次累積開存率は,B群3年72%,E群3年54%で,B群のほうが有意に高値であった.二次開存率は,B群3年82%,E群3年60%であった.救肢率は,B群3年86%,E群3年82%で両群間には有意の差はなかった.生存率はB群5年57%,E群5年42%でE群のほうが有意に低値であった.【結語】膝窩動脈以下の病変を有する重症虚血肢では,開存率は血管内治療群に比べてバイパス群のほうが良好であったが,救肢率には差はなかった.治療成績や生命予後をみれば当科での血管内治療の適応は妥当と考える.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top