2013 年 22 巻 4 号 p. 755-757
要 旨:症例は75歳女性.腰部脊柱管狭窄症に対する腰部椎体間固定術施行中の事例.腹臥位でL3/4椎間板を髄核鉗子で郭清中に同部より出血あり,血圧30 mmHgまで低下するも急速輸液,輸血にて循環動態回復し固定術を終了,ICU入室となった.その4時間後に再び血圧50 mmHgまで低下し造影CTを施行,腹部大動脈末端部背側に動脈相で造影される後腹膜血腫を認め,腰椎手術中に発生した大動脈損傷による出血性ショックと診断した.緊急開腹術を施行し,腹部大動脈末端部背側に穿孔部を認めたため,フェルト補強下に縫合閉鎖した.術後経過は順調で,1カ月間の歩行リハビリ後に独歩にて自宅退院となった.稀ではあるが椎間板手術の際に発生しうる致命的合併症であり,迅速な対応が必要である.