2013 年 22 巻 4 号 p. 779-782
要 旨:症例は63歳,男性.9年前に腹部大動脈Yグラフト置換術,5年前に同グラフト感染を発症した.人工血管の十二指腸穿破がみられ,Yグラフトを除去し,右腋窩-両側大腿動脈バイパス術と十二指腸-空腸吻合を施行した.大動脈は腎動脈直下で盲端とした.今回,突然の下血,著明な貧血と血圧低下で緊急入院となった.CTで大動脈盲端と横行結腸の癒着,結腸への造影剤の漏出,大腸内視鏡で横行結腸内に大動脈盲端の縫合糸がみられ,同部位から出血していた.大動脈盲端の横行結腸穿破の診断で手術となった.腹部正中再切開,癒着を剥離して大動脈の盲端と穿孔部を露出すると,盲端は陳旧性の血栓が充満し大動脈壁は破綻していた.血栓でかろうじて盲端が閉鎖された状態で,少量の血液が流出していた.ウシ心膜の短冊を使用し大動脈壁を2層で再縫合した.癒着での残存横行結腸粘膜露出面は焼灼し,横行結腸を切除,端々吻合で再建した.術後経過は良好であった.