日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
血管内治療における穿刺部トラブル症例の検討
―合併症回避のための方策―
蔡 景襄市来 正隆菅原 弘光鎌田 啓介中野 善之
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2013 年 22 巻 7 号 p. 947-950

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抄録

要旨:【目的】血管内治療(以下IVR)における穿刺部トラブルにより,当科に緊急搬送された症例に対する治療を通じ,合併症回避の方策を検討した.【症例】2009 年9 月から2011 年9 月までの2 年間で,頭頸部領域のIVR 後穿刺部トラブルにより6 名の症例が当科に緊急搬送された.年齢は,15~87 歳.男性4 例,女性2例.頸動脈狭窄に対するステント留置5 例,脳血管奇形に対するコイル塞栓が1 例であった.【結果】全例,穿刺部は右鼠径部であり,仮性動脈瘤形成が4 例(感染1 例),総大腿動脈閉塞による下肢虚血が2 例であった.当院搬送までの期間は2~10 日であった.超音波検査,CT 施行後,緊急手術を行ったが,仮性動脈瘤4 例の穿刺部位は浅大腿動脈であり,同部からの出血が認められた.3 例で穿刺部縫合止血術,2 例で自家静脈片を用いたパッチ血管形成術(血栓摘除追加1 例),1 例で自家静脈を用いた血行再建術を行った.1 例で,術後腓骨神経麻痺による歩行障害を認めたが,他の5 例では機能障害は残らなかった.【結論】鼠径部穿刺のトラブルでは,急性動脈閉塞や仮性動脈瘤に感染が合併すると,血行再建が困難となり,下肢大切断に至る場合もある.総大腿動脈を確実に穿刺するために,超音波検査,CT による,総大腿動脈,浅大腿動脈,大腿深動脈の術前mapping が重要である.さらに,IVR 終了後,止血デバイスに安易に頼ることなく,圧迫止血に十分留意するとともに,総大腿動脈の血管径が5 mm 未満や壁肥厚,石灰化が著明な症例では,経皮的穿刺に固執せず,大腿動脈を露出して直視下の穿刺を考慮することが,合併症回避には必要である.

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