抄録
要旨:症例は77 歳,男性,透析患者.7×8.5 cm の弓部大動脈の囊状瘤に対し,右鎖骨下動脈から8 mm T字graft を用いた左総頸動脈,左鎖骨下動脈へのdebranching 後にTEVAR(開窓型ステントグラフト内挿術,遠位側38 mm 径×200 mm 長,近位側42 mm 径×200 mm 長)を行った.術後,type III エンドリークによる大動脈瘤の拡大,上行大動脈解離,左総頸動脈へのバイパス閉塞のため,再手術を行った.近位側のステントグラフトを除去し,type Ib エンドリークはなかったので,遠位側のステントグラフトをそのまま用いて全弓部大動脈置換と左総頸動脈再建術を行った.TEVAR は,低侵襲で手術死亡率を格段に改善させたが,エンドリークに対する追加処置,半永久的な画像追跡が必要で,ひとたび再手術となれば死亡率が高いことも念頭において,治療を行わなければならないと思われた.