2013 年 22 巻 7 号 p. 976-979
要旨:吻合部仮性瘤術後,短期間に再発した症例を経験した.症例は69 歳の糖尿病の男性,PTFE グラフトによる両側大腿膝窩動脈バイパス施行3 年後に右中枢側吻合部仮性瘤が発生した.局所感染兆候はなく,単純縫合にて手術施行.術後創治癒遷延したがデブリードマン後治癒,退院.しかし術後2 カ月で同部に仮性瘤再発.その際も感染兆候はなかったが,潜在感染を疑い,再手術は,仮性瘤を切除し,外腸骨動脈より鼠径部を外側に迂回し,鼠径靭帯上を通って大腿外側から膝上のグラフト末梢にPTFE グラフトでバイパスした.仮性瘤発生部は内膜摘除後吻合した部位で,仮性瘤の原因は吻合部自家動脈の劣化が最も考えられる.しかし,足白癬の合併や,インスリン自己注射,術後創治癒遷延などから,不顕性感染も否定できない.吻合部仮性瘤の手術は,グラフト摘除,再置換が望ましいと思われる.