2013 年 22 巻 7 号 p. 984-988
要旨:症例は52 歳男性,重症大動脈弁閉鎖不全を伴う急性 A 型大動脈解離の診断で緊急手術となった.手術は,中程度低体温,逆行性脳灌流法で,上行大動脈置換術を施行した.低酸素血症のため,人工心肺離脱が不可能となりV-A ECMO(veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation)に移行した.V-A ECMO の送血は腋窩動脈を選択した.術後の出血対策として,抗凝固剤はメシル酸ナファモスタットを使用した.術後,出血は徐々に減少し,65 時間でV-A ECMO から離脱,術後5 日目には人工呼吸器から離脱し,独歩で退院となった.急性大動脈解離術後の人工心肺離脱不能症例に対して,腋窩動脈送血でV-A ECMO を使用し脳合併症を回避し救命した.また,ECMO 使用中の抗凝固はメシル酸ナファモスタットを使用することにより,出血を制御可能であったので報告する.