日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
膝窩動脈瘤の治療戦略
―手術時期,アプローチ,グラフト選択について―
神谷 健太郎進藤 俊哉佐藤 正宏本橋 慎也榊原 賢士井上 秀範加賀 重亜喜鈴木 章司松本 雅彦
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 23 巻 1 号 p. 7-12

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抄録

要旨:【目的】膝窩動脈瘤は破裂しても生命の危険は少ないが,下肢切断となる危険性が高い疾患である.今回われわれは,膝窩動脈瘤の治療戦略について検討した.【方法】山梨大学(1992〜2011)と東京医科大学八王子医療センター(2005〜2011)の症例をretrospective に比較検討した.【結果】21 人29 肢(男17 女4,平均73.6 歳),平均瘤径33.9 mm.手術は23 肢(79.3%)に施行(血行再建術21,膝下切断術2).血行再建の術式は,直接吻合術1 肢とバイパス手術20 肢(SVG 10,人工血管10).術後平均観察期間は1364日,全グラフト5 年開存率は71.8%であった.有症状の12 肢で緊急手術(血行再建術11)が必要であった.瘤径が小さい2 症例(15,30 mm)で膝下切断となった.開存率は待機手術で100%,緊急手術で44.3%であった.アプローチ別開存率では,内側アプローチのSVG もしくは直接吻合で88.9%,人工血管で45.7%となり,後方アプローチの人工血管で100%であった.内側アプローチ中1 例で瘤再拡大により再手術が必要となった.グラフト別開存率では,SVG で87.5%,人工血管8 mm 以上で100%,8 mm未満で31.3%であった.【結論】膝窩動脈瘤は無症状での待機的血行再建手術を推奨する.アプローチ別による開存率に有意差はないが,後方アプローチによる術式には根治性が高い可能性が示唆された.グラフト別の開存率では,8 mm 以上の人工血管はSVG 同様の良好な開存率があると考えられた.

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