2014 年 23 巻 6 号 p. 950-955
要旨:GRF glue を使用した急性A 型解離術後に中枢側に再解離,仮性瘤の形成を認めた2 例を経験した.1 例目は7 年前に弓部置換を施行された61 歳男性,中枢側の再解離によるバルサルバ洞の瘤化と大動脈弁閉鎖不全に対して自己弁温存大動脈基部置換術(aortic reimplantation),末梢側の仮性瘤に対してTEVAR を施行した.2 例目は78 歳男性,上行大動脈置換4 年後に中枢側の仮性瘤形成と大動脈弁閉鎖不全をきたしたため大動脈基部置換術(Bentall 手術)が施行された.病理では双方ともホルマリンによる組織傷害所見と合致する,中膜の凝固壊死が認められた.GRF glue の使用によりA 型大動脈解離の急性期成績は向上したが,遠隔期合併症として5~20%で仮性瘤形成を認めるとされ,本邦では現在その使用は下火となっている.しかしながら多くの症例で使用された経緯があり今後も合併症の発生を注意深く観察する必要がある.