抄録
要旨:症例は68 歳男性.突然の激しい胸背部痛を自覚し,近医でStanford B 型急性大動脈解離と診断され当院へ搬送された.降圧療法を行ったが,入院経過中に血管径の急速な拡大と真腔圧排による左下肢虚血が認められるようになった.重症の腰椎椎間板ヘルニアを有するため広範囲人工血管置換術は困難であると判断し,解離発症後2 カ月後に,左鎖骨下動脈末梢にあるprimary entry の閉鎖を行った.Entry閉鎖にはZone 2 より中枢からのステントグラフト留置が必要であり頭部分枝温存目的に開窓式ステントグラフトであるNajuta 胸部ステントグラフトシステム® を用いた.術後造影CT で偽腔中枢側の血栓化と真腔拡大を認めた.リハビリを経て術後28 日目に自宅退院した.製品化されたNajuta 胸部ステントグラフトによるB 型大動脈解離の治療はいまだ報告されておらず,若干の知見を加え報告する.