抄録
要旨:症例はコントロール不良の糖尿病を有する53 歳男性.左足壊疽のため他施設に入院した.造影CT で腹部大動脈遠位部から両側総腸骨動脈にかけて狭窄,閉塞を認めた.血管内治療が行われ,右総腸骨動脈へは,ステント留置が施行されたが,左総腸骨動脈へはガイドワイヤー不通過のため,患側である左下肢の血行再建は不成功であった.外科的血行再建目的で当科へ入院となった.手術は,右総腸骨動脈内のステントを抜去し,腹部大動脈遠位部から両側総腸骨動脈にかけて血栓内膜摘除術を行った.術後に分層植皮術を要したが,血行再建術の5 カ月後,左足部の潰瘍はほぼ上皮化した.大動脈-腸骨動脈閉塞性病変に対する外科的血行再建では,人工血管によるバイパス術が主流ではあるが,大動脈遠位部から総腸骨動脈にかけての限局した病変の場合は,血栓内膜摘除術も選択肢の一つになると考えられる.