日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
総説
大動脈瘤および大動脈解離の病理
羽尾 裕之
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 23 巻 7 号 p. 957-963

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抄録

要旨:大動脈瘤の破裂は中高齢者の死因の重要な位置を占めている.腹部大動脈瘤は粥状動脈硬化が基礎病変として存在していることが多く,粥腫による中膜の著明な萎縮と弾性線維の破壊が認められる.瘤進展の分子生物学的メカニズムではmatrix metalloproteinase の活性化が報告されている.上行大動脈瘤は囊状中膜壊死による瘤形成が最も多く,中膜壊死・弾性線維の減少・ムコ多糖類の沈着などを伴う.大動脈解離は囊状中膜壊死による中膜の脆弱性が病因となることが多く,高血圧・先天性2 尖弁・Marfan症候群などが関連している.大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術ではエンドリークに伴った瘤の再拡張や塞栓症の合併が臨床的に問題となっている.われわれの経験したステントグラフト留置後の剖検例から,多彩な病理学的変化を示す大動脈壁に対し確実にステントグラフトを留置するためには,術前の血管の詳細な評価が重要と考えられた.

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