日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
TEVAR 術後に類白血病反応を呈し診断治療に難渋した1 例
柳 茂樹田村 暢成田中 厚寿瀧 智史中津 太郎許 敞一
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 25 巻 p. 139-143

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抄録
要旨:症例は87 歳の男性.炎症反応高値を伴う多房性囊状の下行胸部大動脈瘤を認め,感染性大動脈瘤を疑い抗生剤治療を開始した.しかし経過を通じて発熱はなく血液培養・プロカルシトニンとも陰性で,CT では瘤の形態変化や周囲の軟部陰影も乏しいため,感染瘤は否定的であり,瘤破裂の可能性を考慮し胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行した.術後第1 日目からWBC の異常高値が認められ,患者のWBC は最大112800/μl まで上昇する類白血病反応を呈し,急速に進行する両鼠径部の壊疽性膿皮症を発症した.経過中抗生剤治療には反応せず,多臓器不全に至り術後21 日目に死亡した.剖検にて骨髄の過形成,幼若球の増加を認め,慢性骨髄単球性白血病が背景にあり手術を契機に急性転化したことが示唆された.TEVAR が低侵襲とはいえ,術前の炎症については十分な検討を行い手術適応を評価することが重要であると考えられた.
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