抄録
要旨:TEVAR(thoracic endovascular aneurysm repair)後大動脈瘤感染の頻度は少ないが,極めて予後不良である.今回,上行大動脈人工血管置換,頸部分枝バイパス術+ 2 期的TEVAR 後に発症した,グラフト留置部大動脈瘤感染に対し,ステントグラフトを除去することなく,大動脈瘤壁除去+ 有茎広背筋弁充填術を施行し,救命し得た1 手術例を経験したので報告する.症例は62 歳男性.高度肥満,維持透析施行中.上行大動脈人工血管置換,頸部分枝バイパス術+ 2 期的TEVAR 後,発熱,呼吸困難にて入院となった.精査の結果,縦隔炎とグラフト留置部大動脈瘤感染を認めた.グラフト留置部大動脈瘤感染に対して,感染瘤壁切除洗浄ドレナージ+ 有茎広背筋弁充填を行った.術後,全身状態も改善し,現在は良好なADL を保っている.また,術後5 カ月経過した現在も明らかな感染の再燃は認めていない.