日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
破裂性腹部大動脈瘤患者の手術前搬送過程短縮に伴う症例数増加と重症化
松下 昌裕池澤 輝男坂野 比呂志杉本 昌之出津 明仁玉井 宏明
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2016 年 25 巻 p. 69-75

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抄録

要旨:【目的】破裂性腹部大動脈瘤患者は手術可能な施設へ至るまでに多くが死亡する.そのため,手術前患者搬送が重要である.一宮市で循環器専門病院と心臓血管外科のない市民病院を統合した結果,他院からの紹介搬送以外の,手術可能施設に直接来院する破裂性腹部大動脈瘤患者が増加した.搬送過程が短縮したと思われるので,その影響を検討した.【方法】循環器専門病院と市民病院の統合前3 年7 カ月間の腹部大動脈瘤症例を循環器センター群,統合後3 年9 カ月間を市民病院群とした.両群とも同一チームが腹部大動脈瘤治療を行った.【結果】待機手術の症例数と成績に差はなかった.破裂症例は循環器センター群5.9 例/年,市民病院群10.5 例/年であった.循環器センター群は全例他病院からの搬送であったが,市民病院群は42%が直接来院であった.Hardman index 3 以上の重症例は循環器センター群で14%,市民病院群で39%であった.市民病院群の5 例は手術不能であり,同群の4 例は人工血管置換後に大動脈遮断解除できなかった.破裂全体の死亡率は,循環器センター群14%,市民病院群42%であった(P=0.0410).生存例は循環器センター群5.0 例/年,市民病院群6.2 例/年であった.【結論】破裂性腹部大動脈瘤患者の搬送過程を短縮することで,重症例が増加し,死亡率が上昇した.しかし,有意差はないが,生存例の増加を認めた.

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