2016 年 25 巻 p. 283-287
要旨:症例は66 歳男性.朝10 時過ぎに急激な背部痛を自覚し,当院に救急搬送になった.心電図は 洞調律で異常所見は認めなかった.来院後より激しい腹痛の訴えがあり,腹部でbruit を聴取した.胸腹 部造影CT で急性大動脈解離DeBakeyIIIb を認め,真腔狭小化のため上腸間膜動脈(SMA)が閉塞してい た.Entry 閉鎖と真腔血流を確保するために緊急で胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行.術中造 影でSMA の血流改善を認めた.続いて審査腹腔鏡を行い腸管の色調が問題ないことを確認して手術を終 了した.術後の造影CT で下行大動脈の偽腔にわずかに血流を認めたが,真腔は拡大しており,腹部分枝 の血流は良好に保たれていた.経過良好にて術後18 日目に自宅退院となった.(日血外会誌2016;25:283– 287)