日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
腹部大動脈瘤術後に合併した乳糜腹水に対してオクトレオチド酢酸塩が奏功した1例
川又 健 塚田 亨佐藤 真剛渡辺 泰徳
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 25 巻 p. 335-339

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抄録

乳糜腹水は腹部手術において稀に認められる合併症であり,その治療法は確立されていない.乳糜腹水を発症すると栄養,免疫機能の低下から敗血症などの重大な合併症を引き起こすため,早期介入が必要である.今回,われわれは腹部大動脈瘤術後に発症した乳糜腹水に対してソマトスタチンアナログであるオクトレオチド酢酸塩による保存的治療が奏功した1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性で感染性動脈瘤に対して人工血管置換術を施行したが,術後に乳糜腹水を合併した.乳糜腹水の診断の後,直ちに絶食,完全静脈栄養とし,同時にオクトレオチド酢酸塩の投与を行ったところ,速やかに乳糜腹水の改善が得られた.オクトレオチド酢酸塩に起因した副作用も認めなかった.腹部手術後の乳糜腹水に対して早期診断およびオクトレオチド酢酸塩の投与は治療期間の短縮および予後の改善につながると考えられた.

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