2016 年 25 巻 p. 341-345
四肢外傷の合併症として仮性動脈瘤が前脛骨動脈に単独で生じることは稀である.25年前の外傷が原因と推測される前脛骨動脈仮性動脈瘤を経験したので報告する.症例は61歳女性,左下肢痛で近医を受診した.単純X線像で脛骨外側部に骨変形,MRIで同部に境界明瞭な充実性腫瘤を認め,骨腫瘍疑いで当院整形外科を紹介受診となった.初診時の下肢エコーで仮性動脈瘤が疑われて当科紹介となり,CT血管造影で左脛骨の外側に接する囊状の仮性動脈瘤を認めた.瘻孔部の単純閉鎖予定であったが前脛骨動脈は断裂しており,前脛骨動脈の遮断により趾尖の急激なSpO2低下を認めたため,大伏在静脈を用いた前脛骨動脈バイパス術を行った.術後は合併症もなく,術後2日目には下肢痛が消失し,9日目に軽快独歩退院となった.退院後25カ月間観察を行いグラフトの開存と瘤の縮小を認めた.