2016 年 25 巻 p. 353-357
症例は70歳,男性.診断は遠位弓部大動脈瘤および下行大動脈瘤であった.ステントグラフト留置直後より脳脊髄液ドレナージを開始し,対麻痺症状なく術後1日目にドレナージチューブを抜去した.しかし,術後2日目に対麻痺が出現したために,脳脊髄液の減圧を試みた.脳脊髄液圧を測定したところ,初圧20 cmH2Oの高値であり,脳脊髄液ドレナージを開始した.症状は一旦改善するも,同日対麻痺の再燃が認められた.d-マンニトールと副腎皮質ホルモンの点滴を併用し,リハビリを開始した.術後7日目までに症状は改善し独歩可能となり,術後21日目に自宅退院した.ステントグラフト留置後に二峰性対麻痺が出現したが,持続脳脊髄液ドレナージとd-マンニトールや副腎皮質ホルモンの併用で症状なく退院し得た.