日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
胸部遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術施行時に逆行性上行大動脈解離を合併した一例
白石 達也宮本 昌一 高井 文恵森島 学植山 浩二猪子 森明
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2017 年 26 巻 1 号 p. 77-81

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抄録

症例は高血圧,無症候性脳梗塞の既往を有する81歳女性,胸部造影CTにて偶発的に大動脈遠位弓部に,穿通性大動脈潰瘍(PAU)を伴う囊状の動脈瘤を指摘された.高齢であること,呼吸機能が悪いこと,脳梗塞既往により開胸術に伴う合併症のリスクは高いと考えられたため,胸部大動脈ステントグラフト内挿術(Thoracic endovascular aortic repair; TEVAR)施行となったが,TEVAR施行後に逆行性上行大動脈解離(Retrograde ascending aortic dissection; RAAD)および順行性下行大動脈解離を発症した.血圧などのバイタルサインは維持されており,高齢で手術リスクも高いことも考え,保存的加療の方針とし降圧と鎮静および止血剤投与を行った.翌日,解離腔の血栓閉塞および偽腔の縮小を認めたため,以後保存的加療を継続することができ,リハビリ病院に転院となった.TEVAR施行に伴い逆行性大動脈解離が生じた場合,一般的には緊急手術が選択されるが本症例のように保存的加療で治療しえた症例を経験したので報告する.

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