2017 年 26 巻 1 号 p. 71-75
症例はクモ膜下出血の後遺症を有する68歳の女性で,安静時疼痛を主訴とする重症下肢虚血の診断で当院に転院となった.造影CT検査および下肢血管造影検査で,左腸骨・大腿・膝窩動脈領域に広範囲に閉塞性病変を認め,総大腿動脈,大腿深動脈も閉塞していた.膝窩動脈が一部造影されたが膝下で閉塞し,後脛骨動脈のみが足関節以下まで開存していた.手術は全身麻酔下に6 mmのヘパリン結合型PTFE人工血管を用いて,右総大腿動脈と膝上の左膝窩動脈間に大腿–膝窩交叉バイパスを作成した.更に右下肢より採取した大伏在静脈を人工血管の末梢吻合部近くに中枢側吻合し,皮下ルートで左足関節部後脛骨動脈に末梢側吻合した.術後経過は良好で,術後1年でグラフトは良好に開存している.本術式は経皮的血管形成術や開腹手術が困難で,同側大腿動脈がinflowとして不適当な場合の血行再建術式として有用と考えられた.