2017 年 26 巻 1 号 p. 65-69
症例は85歳の女性で,食後腹痛および血便で紹介となった.造影CTで上腸間膜動脈閉塞を認め,腸管虚血による症状と診断した.絶食で症状は改善したが,食事を開始したところ腹痛が再度出現した.その後も症状は悪化したため緊急手術を行った.手術は人工血管を用いた左外腸骨動脈–上腸間膜動脈バイパス術とした.術後は虚血性腸炎が遷延したが,腹痛などの症状は消失した.術後1年経過したがグラフトは開存し良好である.現在のところ上腸間膜動脈閉塞症に対する術式には確立されたものはない.症例によって使用できるグラフトや中枢側の血管の状態が異なるため,症例に応じた術式の選択が必要である.