2017 年 26 巻 2 号 p. 125-127
大腿骨頸部骨折後の仮性動脈瘤は,遷延する痛みの原因が骨折による痛みと判別することが時に困難であり,確定診断に時間を要することがある.症例は85歳男性,右大腿骨転子部骨折に対し髄内釘による固定術をうけた.しかし,右鼡径部の痛みは持続し,受傷6カ月が経ち,右鼡径部から大腿部にかけて徐々に増大する腫瘤を自覚するようになった.造影CTにて瘤内に遊離骨片を認める仮性動脈瘤と診断し,修復手術を施行した.術後,痛みは消失し,独歩退院となった.大腿骨頸部骨折術後半年が経過していても,遷延する痛みが持続しているような症例は,仮性動脈瘤の存在も念頭に置いて診断にあたる必要があると考えられた.