2017 年 26 巻 3 号 p. 171-174
症例は80歳男性.慢性腎不全により維持透析が行われており,5年前に腹部大動脈ステントグラフト内挿術が施行された.1週間前より左側胸部違和感が出現し,CT検査にて最大径98 mmの囊状の胸腹部大動脈瘤(Modified Crawford分類5型)が認められた.術前検査にて重症大動脈弁狭窄症の合併を認めたが,胸腹部大動脈瘤切迫破裂の診断で,準緊急的に人工血管置術を施行した.術中,重症大動脈弁狭窄症による循環動態破綻に備えて,右腋窩動脈送血,大腿静脈脱血の部分体外循環で手術を行った.術中予期せぬ出血があったが,循環動態が破綻することなく,胸腹部大動脈瘤人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,術後21日目に自宅退院し,術後6カ月後に大動脈弁置換術を施行した.