2017 年 26 巻 3 号 p. 157-160
腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の静脈穿破は稀な病態であるが,重篤化することが多いため,早急な治療が必要となる.従来から開腹手術により動静脈瘻の閉鎖および人工血管置換術が行われてきたが,その手術成績は必ずしも良好とはいえない.そのため,近年,低侵襲な血管内手術での治療報告がなされるようになってきた.症例は70歳,男性.当院受診時に進行性の心不全を呈しており,造影CT検査で右総腸骨動脈瘤の静脈穿破と診断,緊急手術を施行した.手術は右内腸骨動脈のコイル塞栓および腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.術後,血行動態の急速な改善を得たが,術後CT検査で少量のエンドリークによる残存短絡を認め,経皮的コイル塞栓術による追加治療を行った.動脈瘤の静脈穿破に対するEVARは,血行動態の改善には極めて有用であるが,術後エンドリークによる残存短絡には注意し,適切な対処を行う必要がある.