日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤に対する治療戦略—ステントグラフトは何をもたらしたか?—
緑川 博文 高野 隆志植野 恭平滝浪 学影山 理恵関 晴永菅野 恵佐藤 晃一
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2018 年 27 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

【目的】腹部大動脈瘤(AAA)治療にステントグラフト内挿術(EVAR)が何をもたらしたのかを検討した.【対象】EVAR導入前5年をI期(2002年1月~2006年12月,105例),導入後5年をII期(2007年1月~2011年12月,242例),その後5年をIII期(2012年1月~2016年12月,237例)とし比較検討した.【結果】待機的手術:OR群では,I期に比しIIおよびIII期において統計学的有意にアメリカ麻酔学会分類ASA2度が増加し,3および4度の減少を認めた.腎動脈上遮断がI期5例(6.3%)に比しIII期18例(19.1%)と統計学的有意(P<0.05)に増加を認めた.EVAR群ではIIおよびIII期において年齢,性別,ASA分類に差異はなかった.IIおよびIII期における両群間比較では,統計学的有意にEVAR群が高齢(P<0.01),ASA2度はOR群が多く,3ないし4度はEVAR群が多かった(P<0.01).全AAA手術に対する破裂例は,I期に比しIIおよびIII期において統計学的有意に減少した(P<0.01).【結語】EVAR導入によりハイリスクを含む症例数増加による治療成績悪化は認められなかった.

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