日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
27 巻 , 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
講座
  • 三井 信介
    2018 年 27 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル フリー

    重症虚血肢の治療目標の確実な達成のためには血行再建が必須で,長期生存が期待できる患者や大きな組織欠損を有する患者ではバイパス手術が第一選択である.治療成功の鍵は術前治療戦略にある.画像検査と臨床症状より,手術方法を決定する.中枢吻合はinflowの良好な動脈,末梢吻合はrunoff良好で病変の少ない動脈を選択するが,最終的には術中血管造影の結果で決定する.自家静脈はCTまたは超音波検査で評価し,使用可能な自家静脈は術前にマッピングし,バイパス方法と最適なバイパス経路も決定しておく.必ずしも予定通りに進むとは限らないため,代替方法も準備する.ここでは筆者が最もよく行うnon-reversed vein graftによる手術方法を示し,重症虚血肢に対するバイパス手術の要点と盲点につき記述する.

  • 宮本 伸二
    2018 年 27 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    胸部大動脈ステントグラフトでは凡そ半数が弓部にかかる治療を要し,すなわち主要分枝の閉塞を伴う.したがってデブランチの技量が適応拡大に重要となる.鎖骨下動脈の再建は特殊な条件以外では行う必要はないが待期手術であればデブランチしておく方が安全である.総頸動脈間バイパスの食道経路は美容上もメリットがあるが嚥下困難を生じさせないよう気管膜様部後方を通過させなければならない.Zone 0 TEVARで開胸を伴う上行からデブランチを行う方法は低侵襲とはいえずあまり推奨されない.開胸をさけるためにChimney法,in-situ fenestration(ISF), branched or fenestrated graft法がある.われわれのSquid capture法によりISFは安全でかつ有効な方法である.弓部デブランチ自体は脳梗塞のリスクではなく,左鎖骨下動脈遮断が塞栓予防として重要である.

原著
  • 石澤 愛, 内田 徹郎, 浜崎 安純, 黒田 吉則, 水本 雅弘, 山下 淳, 林 潤, 廣岡 秀人, 赤羽根 健太郎, 貞弘 光章
    2018 年 27 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル フリー

    【目的】閉塞性動脈硬化症(ASO)以外の膝窩動脈単独病変は比較的まれで,症例に応じた治療計画を要する.【方法】2006年1月から2016年9月に経験したASO以外の膝窩動脈単独病変に対する手術例を検討した.【結果】ASO以外の膝窩動脈単独病変は7例8肢,膝窩動脈瘤3例,骨軟骨腫に合併した膝窩仮性動脈瘤2例,膝関節置換術後の仮性動脈瘤破裂1例,外膜囊腫1例であった.膝窩動脈瘤3例4肢は人工血管置換術,骨軟骨腫に合併した膝窩仮性動脈瘤2例は動脈形成術に骨棘切除を併施,膝関節置換術後の仮性動脈瘤破裂1例は人工血管置換術を施行,外膜囊腫1例は囊腫切除後に大伏在静脈グラフトで再建した.いずれも下肢虚血の増悪や切断を要せず,遠隔期のグラフトおよび膝窩動脈の開存は良好であった.【結論】多彩な病態を呈するASO以外の膝窩動脈単独病変では症例毎にアプローチ法やグラフトを適宜選択し,多面的な治療戦略を要する.

  • 緑川 博文, 高野 隆志, 植野 恭平, 滝浪 学, 影山 理恵, 関 晴永, 菅野 恵, 佐藤 晃一
    2018 年 27 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2018/02/14
    公開日: 2018/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】腹部大動脈瘤(AAA)治療にステントグラフト内挿術(EVAR)が何をもたらしたのかを検討した.【対象】EVAR導入前5年をI期(2002年1月~2006年12月,105例),導入後5年をII期(2007年1月~2011年12月,242例),その後5年をIII期(2012年1月~2016年12月,237例)とし比較検討した.【結果】待機的手術:OR群では,I期に比しIIおよびIII期において統計学的有意にアメリカ麻酔学会分類ASA2度が増加し,3および4度の減少を認めた.腎動脈上遮断がI期5例(6.3%)に比しIII期18例(19.1%)と統計学的有意(P<0.05)に増加を認めた.EVAR群ではIIおよびIII期において年齢,性別,ASA分類に差異はなかった.IIおよびIII期における両群間比較では,統計学的有意にEVAR群が高齢(P<0.01),ASA2度はOR群が多く,3ないし4度はEVAR群が多かった(P<0.01).全AAA手術に対する破裂例は,I期に比しIIおよびIII期において統計学的有意に減少した(P<0.01).【結語】EVAR導入によりハイリスクを含む症例数増加による治療成績悪化は認められなかった.

    Editor’s picks

  • 中村 健, 内田 徹郎, 邵 力, 浜崎 安純, 林 潤, 貞弘 光章
    2018 年 27 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    【目的】保存的治療を行ったB型解離の患者で,慢性期に血管径が拡大する危険因子を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】2004年7月から2016年4月までの間に当院で治療した急性B型解離127例中,保存的治療を第一とした104名を対象とした.【結果】104例中,血管径が拡大した36例(35%:E群)と非拡大群(U群:68例,65%)とを比較すると,拡大群では初診時の血管径が大きい(42±7 vs 36±7, p<0.01),血管径の拡大速度が速い(10±32 vs −3±19, p<0.05),chronic obstructive pulmonary disease(COPD)が多い(44% vs 25%, p<0.05)という結果であった.偽腔が開存型であること(p<0.05, 95% CI 0.407–0.935)と初診時の血管径が大きいこと(p<0.01, 95% CI 1.076–1.158)が独立した危険因子であり,とくに初診時血管径が40 mmを超えていた症例は慢性期に拡大しやすい傾向にあった(p<0.01).大動脈関連死回避率(1/5/10年)はE群:100/86/77%,U群:92/79/79%であり,差は認めなかった(p=0.747).【結論】血管径の拡大群,非拡大群の大動脈関連死回避率は良好な成績であった.慢性期の大動脈径拡大の第一の危険因子は初診時の大動脈径であった.

    Editor’s picks

  • 長内 享, 竹谷 剛, 三浦 純男, 福田 幸人, 大野 貴之
    2018 年 27 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2018/02/27
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    【目的】EVAR後エンドリークにより瘤径増大した症例への開腹手術(Late Open Conversion: LOC)の術式を検討する.【方法】2007年1月から2017年8月までAAAに対するEVARを185例施行し,エンドリークによりLOCを要した6例(3.2%)の術式を検討した.【結果】6例中3例(Type Ia 1例,Type II 1例,Type Ia+II 1例)にステントグラフト(SG)全抜去+Y型人工血管置換術を施行した.残りの3例はSG温存し,Type Ia 1例に中枢ネック大動脈のbanding,Type II 1例に下腸間膜動脈結紮,Type V 1例にSGへのfibrin製剤散布+瘤縫縮を行った.手術時間,出血量,術後在院日数でSG温存手術が優れていた.【結論】SG全抜去手術は早期成績不良であるため,低侵襲なSG温存手術はLOCにおいて妥当な選択肢と考える.

症例
  • 赤岩 圭一, 古野 哲慎, 尾田 毅, 中村 克彦, 田中 啓之
    2018 年 27 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2018/02/14
    公開日: 2018/02/15
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈瘤破裂に対してEVAR施行後,半年後にType IIエンドリークにて再破裂をきたしたが,開腹手術を施行し良好な結果を得たので報告する.症例は69歳男性.腹痛で前医を受診し,腹部CTで腹部大動脈瘤破裂を認め,当院に救急搬送となり,緊急で局所麻酔下にEVARを施行した.術後のCTでは腰動脈と下腸間膜動脈からのType IIエンドリークを認めたが,瘤の拍動は消失し,全身状態は安定しており,外来で経過観察を行った.EVAR半年後のCTでは前回CTで認めなかった瘤内の粥腫に連続する突出した腫瘤を後腹膜に認め,contained ruptureと診断した.血管造影で,複数の腰動脈からのType IIエンドリークが確認され,確実性の高い治療が必要と判断し,開腹による手術を選択した.手術は瘤を左右から剝離し,腰動脈,下腸間膜動脈を結紮し,瘤切開にて瘤内への血流がないことを確認し,瘤壁を縫縮しながら閉鎖した.経過は順調で独歩退院し,術後4ヵ月で瘤拡大はない。

  • 岸本 憲明, 生田 剛士, 藤井 弘史, 木村 英二, 井上 和重, 清水 幸宏
    2018 年 27 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2018/02/19
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性.突然の胸痛と発熱,呼吸困難で当院に救急搬送された.単純CTでは著明な肺鬱血を認め,明らかな上行大動脈瘤などの所見はなかった.その後呼吸・循環動態が急速に悪化し,気管内挿管を行った.救急外来での経胸壁心エコー検査にて左心房へのシャント血流を思わせる所見を認め,心内膜炎による左房へのシャントによる急性心不全を疑い,緊急手術を行った.上行大動脈基部に右心房,上大静脈を圧迫する囊状大動脈瘤を認めた.大動脈瘤を切開すると,後壁に左心房への廔孔を形成する仮性瘤を認めた.廔孔周囲の脆弱組織を切除し直接縫合で破裂孔を閉鎖した後,大動脈基部置換術を行った.術後3年の現在,再発もなく状態は良好である.梅毒性大動脈瘤の左房破裂の報告は過去に2例しか報告がなく,極めて稀な病態である.われわれの経験不足もあり,早期に梅毒性大動脈瘤と診断できなかったことから,その問題点も含めて文献的考察を行い報告する.

  • 神藤 由美, 西村 潤一, 深田 睦, 坂上 直子
    2018 年 27 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2018/02/27
    公開日: 2018/02/24
    ジャーナル フリー

    症例は24歳女性.路上に倒れているのを通行人に発見され,救急搬送された.来院時,腹部に刺創を認め,ショック状態であったため,緊急開腹止血術(肝縫合,中結腸動脈結紮)が施行された.第5病日のCTで上腸間膜動脈(SMA)仮性動脈瘤(SMAPA)とSMA–空腸静脈(JV)廔(SMAJVF)を認めた.SMAPAは経時的に増大を示したため早急な治療が必要と判断した.CTの計測でSMAPAの中枢・末梢側正常血管径が6.5・6.4 mmとほぼ一定で,1st空腸動脈(JA)分岐直後,SMAPAネック近位端,同遠位端,2nd JA分岐直前のそれぞれの間隔は13, 6, 9 mmで,計28 mmであった.7 mm径25 mm長のVIABHANを用いれば分枝閉塞なくSMAPAをカバー可能と考えた.第29病日にSMAへのVIABAHN留置とSMAPA塞栓術を施行し,併発症なく治療し得た.

  • 磯田 竜太郎, 森田 一郎, 平林 葉子, 杭ノ瀬 昌彦, 猶本 良夫
    2018 年 27 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    重症虚血肢にはdistal bypassが困難で下肢切断に至る症例もある.今回,足部難治性潰瘍に対してDistal Venous Arterialization(DVA)を用いて救肢した重症虚血肢1例を経験した.症例は62歳男性で左第4.5趾基部に難治性潰瘍を認め当科紹介受診した.左後脛骨動脈閉塞病変に対する血管内治療が不成功のため,同側大伏在静脈を用いて左膝下膝窩動脈−足底動脈バイパス術を行った.吻合部末梢のrun-off不良でグラフト血流維持が困難のため術中にDVAに術式変更し,足関節やや末梢の足背の表在静脈に末梢吻合した.潰瘍部壊死組織のデブリードマンおよび局所陰圧閉鎖療法で術後6カ月目に潰瘍は完全治癒した.末梢吻合部動脈の高度石灰化やrun-off不良でdistal bypassが困難な症例に対してDVAは救肢の選択肢となりうる.

  • 金本 亮, 廣松 伸一, 尼子 真生, 大塚 裕之, 明石 英俊, 田中 啓之
    2018 年 27 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    急性腹部大動脈閉塞症は稀な疾患であるが,MNMS発症率や死亡率はともに高い.症例は77歳男性.夜間に突然の両下肢運動麻痺が出現し救急搬送となった.両下肢の運動感覚障害および末梢動脈触知不良,造影CTで腎動脈下腹部大動脈の閉塞を認め,緊急血行再建の適応と判断した.しかし手術室搬入時に発症より14時間が経過しており,血行再建によるMNMSが懸念されたため,左腋窩動脈–両側大腿動脈バイパス術よる血行再建に加え,再灌流前にCHDFを開始し,modified controlled limb reperfusion(大腿動静脈からの生食灌流と段階的な遮断解除)を行った.術後もCHDFを継続し,MNMSによる致死的な合併症をきたすことなく経過した.両下肢の切断も回避し,最終的に杖歩行まで可能になった.MNMSの高リスク症例であったが,救命・救肢できたので報告した.

  • 小齊 啓祐, 岡留 淳, 星野 祐二, 加藤 誠也, 伊東 啓行
    2018 年 27 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    膝窩静脈性血管瘤は稀な疾患であり,無症状であることが多いが,肺血栓塞栓症の原因となりうる.今回肺血栓塞栓症による心肺停止を機に診断された膝窩静脈性血管瘤の1手術例を経験したので報告する.50歳女性.心肺停止状態で倒れているところを発見され,当院救急搬送となった.心肺蘇生にて自己心拍再開し,心エコー検査で右心負荷所見,造影CTで肺血栓塞栓症を認め,経皮的心肺補助(PCPS)下に血栓溶解療法を行った.PCPS離脱後の下肢静脈エコー検査・造影MRI検査で右膝窩静脈に多量の血栓を伴う60 mm大の囊状の膝窩静脈性血管瘤を認め,肺血栓塞栓症の原因と考えられた.下大静脈フィルター留置後,第24病日に右膝窩静脈性血管瘤切除術を施行した.術後抗凝固療法としてワーファリンの内服を開始し,現在に至るまで静脈瘤・肺血栓塞栓症の再発は認めていない.

feedback
Top