日本血管外科学会雑誌
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症例
長期の松葉杖使用が誘因と考えられた上腕動脈瘤による血栓・塞栓症の1例
横川 雅康 辻本 優関 功二
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2018 年 27 巻 3 号 p. 205-208

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抄録

症例は75歳,男性である.小児麻痺のため幼少時より松葉杖を使用していた.突然,左上肢のしびれと冷感が出現したため当科へ紹介となった.CT血管造影で上腕動脈瘤ならびに同部から橈骨・尺骨動脈分岐部までの閉塞を認めた.血栓除去を試みたが再開通が得られず二期的に自家静脈によるバイパス術を行った.上肢の動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,そのほとんどは仮性動脈瘤で,真性動脈瘤を形成することは更に稀である.原因として,反復する鈍的損傷により真性動脈瘤を形成することがある.この症例は約70年間松葉杖を使用しており,松葉杖による反復損傷のため上腕動脈瘤を生じたものと考えられた.またこの動脈瘤に血栓を形成し,更にこの血栓が末梢塞栓を起こしたため急性虚血をきたしたと推定された.このような動脈瘤では,微小塞栓を慢性的に繰り返すため予後不良となることがある.このため,診断がつき次第,早期に治療を行うことが望ましい.

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