日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
27 巻 , 3 号
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総説
  • 東 信良
    2018 年 27 巻 3 号 p. 187-195
    発行日: 2018/06/05
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    糖尿病時代の到来によって,重症下肢虚血の診断は,循環障害(大小血管障害),易感染性に加え,時として合併する神経障害とそれによる変形や乾燥などの影響を受けて複雑化しており,目の前の患者の足病の病態を的確に理解するのは容易ではなくなっている.血行再建,感染に対するドレナージなど,タイミングを逸すると大きな組織欠損を余儀なくされるため,足病の治療を専門的に行う医療者だけでなく,初療を行う医療者にもわかりやすい分類,診断基準が求められる.そうした中にあって,米国血管外科学会から足病をwound, ischemia, infectionの3方向から診断するWIfI分類が提唱され,最新のガイドラインでその適用が推奨されている.治療方針やその順番の決定に加え,治療後の適切な管理を行ってゆくうえで,血管専門医は勿論のこと,足病に関わる他診療科や多職種にも同じ基準が受け入れられて,普及し,WIfI分類が診療科や施設を超えて共通言語として用いられることが期待される.

原著
  • 小林 平, 濱本 正樹, 小澤 優道, 海氣 勇気
    2018 年 27 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 2018/06/21
    公開日: 2018/06/21
    ジャーナル フリー

    【目的】遠位バイパス術後の感染によるグラフト破綻の症例を検討し,その対策を提示する.【方法】2009年4月から2017年12月までに重症下肢虚血に対して自家静脈を用いた遠位バイパス術を行った361グラフトのうち手術部位感染(SSI)からグラフト破綻を来した5グラフト(1.4%)を対象とした.【結果】破綻時期は4グラフト(80%)で術後1カ月以内であった.破綻部位は3グラフト(60%)が中間部,2グラフト(40%)が末梢側吻合部であった.創部培養は3例がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であり,全例で全身性の炎症反応を認めた.グラフト破綻時に出血コントロール目的に全例でグラフトを結紮した.その後,3例は大切断に至り,1例は敗血症で死亡した.1例は感染コントロール後,遠隔期に再バイパス術を施行し,救肢可能であった.【結論】遠位バイパス術後の感染によるグラフト破綻は重篤な転帰をたどっていた.SSI発症時,とくに術後1カ月以内はグラフト破綻の可能性があることを十分踏まえて治療する必要がある.

症例
  • 辻 龍典, 小林 豊, 川上 敦司
    2018 年 27 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.突然の腹痛,背部痛を主訴に前医受診し,腹部造影CTにて大動静脈瘻(ACF)を合併した破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)を認めたため,治療目的に当院紹介搬送となった.搬送直前に急性心不全を呈し,当院到着後直ちに気管挿管を行い,緊急ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.術後速やかに血行動態は安定し,術後1年6カ月後の造影CTでは,type II endoleakの消失と瘤内の完全な血栓化を確認でき,瘤径は著明に縮小した.ACFを合併したRAAAにおいて,EVAR単独治療は根治療法ではないが,緊急時の初期治療として有効であり,術後も詳細な検査で適切な評価を行い,慎重に経過観察を行うことで,残存するACFの自然閉鎖やtype II endoleakの消失が期待できる.

  • 坂下 英樹, 深山 紀幸, 山本 暢子, 高井 佳菜子, 駒井 宏好
    2018 年 27 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 2018/06/05
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,血液透析患者のバスキュラー・アクセス(vascular access; VA)作製困難症例に対し,足関節部で自家静脈を用いた内シャントを作製したので報告する.症例は50歳女性,糖尿病性腎症による腎機能悪化に伴いVA作製を計画し,両上肢にて計3回のVAを作製した.しかし静脈発達不良で穿刺困難,透析アクセス関連盗血症候群発症,動脈血流不足による血流量不良にて使用不可の状況で,新たなVAとして下肢を選択した.足関節部で足背動脈–大伏在静脈内シャントを作製し,術後12カ月が経過したがトラブルなく透析が継続できている.透析患者は末梢動脈疾患合併も多く,今後長期にわたる観察が必要であるが,VA作製困難例に対する選択肢の1つと考えられた.

  • 横川 雅康, 辻本 優, 関 功二
    2018 年 27 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2018/06/04
    公開日: 2018/06/02
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性である.小児麻痺のため幼少時より松葉杖を使用していた.突然,左上肢のしびれと冷感が出現したため当科へ紹介となった.CT血管造影で上腕動脈瘤ならびに同部から橈骨・尺骨動脈分岐部までの閉塞を認めた.血栓除去を試みたが再開通が得られず二期的に自家静脈によるバイパス術を行った.上肢の動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,そのほとんどは仮性動脈瘤で,真性動脈瘤を形成することは更に稀である.原因として,反復する鈍的損傷により真性動脈瘤を形成することがある.この症例は約70年間松葉杖を使用しており,松葉杖による反復損傷のため上腕動脈瘤を生じたものと考えられた.またこの動脈瘤に血栓を形成し,更にこの血栓が末梢塞栓を起こしたため急性虚血をきたしたと推定された.このような動脈瘤では,微小塞栓を慢性的に繰り返すため予後不良となることがある.このため,診断がつき次第,早期に治療を行うことが望ましい.

  • 斉藤 貴明, 犬塚 和徳, 佐野 真規, 海野 直樹, 山本 尚人, 竹内 裕也
    2018 年 27 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 2018/06/04
    公開日: 2018/06/02
    ジャーナル フリー

    腋窩動脈瘤は比較的稀な疾患である.その成因は反復性外傷や医原性,胸郭出口症候群やMarfan症候群などの全身疾患に伴うものなどが報告されているが,線維筋性異形成(Fibromuscular dysplasia; FMD)によるものは極めて稀である.症例は68歳の女性.発熱の原因精査のための造影CT検査にて右最大径40×長さ69 mm, 左最大径39×長さ67 mmの両側腋窩動脈瘤を指摘され当科紹介となった.全身麻酔下に両側鎖骨下アプローチで動脈瘤切除,両側ともに8 mm外部サポート付きニットダクロン人工血管(Gelsoft ERS)を用いて置換術を施行した.動脈瘤壁の病理組織学的検査では,動脈硬化や動脈炎の所見はなく,内膜の弾性線維は肥厚し,中膜の弾性線維は不規則かつ疎であり,また外膜は正常でFMDに矛盾しない所見であった.術後1年では,動脈瘤の再発なく,グラフトも開存している.

  • 大崎 隼, 吉戒 勝, 佐藤 久, 内野 宗德
    2018 年 27 巻 3 号 p. 213-216
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/08
    ジャーナル フリー

    稀な先天性腎奇形である左骨盤腎を合併した腹部大動脈瘤を経験したので報告する.症例は79歳女性.2013年に検診で最大径33 mmの腹部大動脈瘤を指摘され,2016年6月のCTで48 mmまで拡大した.50 mm未満であるが小柄な女性であり手術適応と判断した.術前CTで左腎は骨盤内にあり,左腎動脈は腹部大動脈瘤より起始していた.右総腸骨動脈から右腎下極へ分岐する右腎副動脈も認めた.腹部正中切開にて腹部大動脈人工血管置換術と左腎動脈再建を施行した.術中,冠灌流用カニューラを左腎動脈に挿入し,冷却リンゲル液にて左腎を灌流した.術後に腎機能障害を認めず経過は良好であった.術後の造影CTで人工血管吻合部に異常を認めず,再建した左腎動脈は良好に開存しており腎梗塞の所見も認めなかった.骨盤腎,腎動脈起始異常を伴う腹部大動脈瘤の手術においては,3D-CTによる腎血管系の術前評価ならびに術中の腎保護が重要である.

  • 長内 享, 三浦 純男, 竹谷 剛
    2018 年 27 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/08
    ジャーナル フリー

    症例は54歳男性.上腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した.造影CTで腹腔動脈解離と解離性脾動脈瘤,血性腹水を認めた.孤立性特発性腹腔動脈解離(isolated spontaneous celiac artery dissection; ISCAD)による解離性脾動脈瘤破裂の診断となり,緊急で開腹脾動脈起始部結紮術を行い術後良好に経過した.解離性脾動脈瘤破裂を合併したISCADという稀な1例を経験したので報告する.

  • 桐生 健太郎, 山浦 玄武, 角浜 孝行, 田中 郁信, 高木 大地, 山本 浩史
    2018 年 27 巻 3 号 p. 221-223
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/08
    ジャーナル フリー

    膝窩静脈性血管瘤は肺血栓塞栓症の原因となりうる重要な疾患であり,その中でも稀な外傷性膝窩静脈性血管瘤を経験したので,報告する.症例は59歳女性.失神と低酸素血症で前医搬送され,CT,超音波検査にて肺血栓塞栓症と左膝窩静脈性血管瘤を指摘された.血栓症を繰り返す可能性があり,手術目的に当科紹介となった.全身麻酔下に瘤切除,瘤口閉鎖術を施行し,その後は1年間の抗凝固療法を行った.現在まで血栓症の再発なく経過している.

  • 三浦 修平, 伊庭 裕, 丸山 隆史, 山田 陽, 栗本 義彦, 中西 克彦
    2018 年 27 巻 3 号 p. 225-228
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/08
    ジャーナル フリー

    EVAR後のType IAエンドリークは,瘤破裂の危険があり,早急な治療を要する.しかし,中枢ネックの形状に解剖学的問題を有する症例では,その治療に難渋する場合がある.症例は86歳,女性.中枢ネックの高度屈曲を原因とするEVAR後のType IAエンドリークに対し,中枢カフ留置によるre-EVARを施行されたが,エンドリークは残存した.その後,瘤径拡大に伴う中枢ネックの拡大とネック長の短縮が進行し,エンドリークが増強したため,手術侵襲を抑えた大動脈バンディングによる外科的再治療を施行した.バンディングによって中枢ネックの形状が修整され,中枢カフによる有効な圧着が可能となり,内外両方向からの中枢補強でType IAエンドリークは完全に消失した.難治性Type IAエンドリークを有するハイリスク症例に対しては,大動脈バンディングを利用した中枢補強が有効な治療選択肢になり得る.

  • 岸本 憲明, 生田 剛士, 藤井 弘史, 角谷 明洋, 木村 英二, 清水 幸宏
    2018 年 27 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2018/06/21
    公開日: 2018/06/21
    ジャーナル フリー

    下肢動脈瘤は胸部や腹部の大動脈瘤と比較して非常に頻度が低い.中でも深大腿動脈瘤は稀な疾患であり解剖学的特徴から早期発見が困難であることも多い.今回われわれは他の末梢動脈瘤経過観察中に偶発的に発見された深大腿動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は76歳男性.71歳時に冠動脈バイパス術,72歳時に腹部大動脈瘤人工血管置換術を当院で施行し,以後他院にて外来通院されていた.以前から両側大腿動脈瘤を認めており,経過観察のため施行した下肢動脈エコーで,左深大腿動脈瘤の存在を指摘され精査加療目的に当院へ紹介された.造影CTにて最大短径42 mmの深大腿動脈瘤を認め,左総大腿動脈も拡張していたため,左総大腿動脈および左深大腿動脈ともに人工血管置換術を施行した.経過は良好で術後10日目に自宅退院した.今回の経験から下肢の末梢性動脈瘤に対する診断,治療などについて文献的考察も含めて報告する.

  • 橋山 直樹, 阿賀 健一郎, 菅原 海, 孟 真, 益田 宗孝
    2018 年 27 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2018/06/21
    公開日: 2018/06/21
    ジャーナル フリー

    大腿深動脈瘤は全末梢動脈瘤の0.5%と報告されており稀な疾患である.今回われわれは更に稀な大腿深動脈の分枝である貫通動脈の動脈瘤を経験した.症例は81歳の女性で,右大腿後面の拍動性腫瘤と疼痛を認めていた.径50 mm,長さ110 mmの巨大な動脈瘤で破裂および塞栓症予防のため手術適応と考えた.解剖学的に前方アプローチでは瘤に到達することが困難で,腹臥位による後方アプローチで手術を施行した.瘤の中枢側の血流遮断が不確実になる可能性があるため,手術直前にPTA(Percutaneous Transluminal Angioplasty)バルーンカテーテルをdeflationした状態で大腿動脈内に留置した.結果的には直視下で貫通動脈遮断が可能で,貫通動脈瘤の切除のみを施行した.術後疼痛は消失し血流障害を生じておらず良好な経過であった.

  • 伊藤 寿朗, 三上 拓真, 沼口 亮介, 渡邊 俊貴, 仲澤 順二, 川原田 修義
    2018 年 27 巻 3 号 p. 247-250
    発行日: 2018/06/28
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル フリー

    解離性大動脈瘤が原因の播種性血管内凝固症候群(DIC)は稀であるが,出血した場合,治療に難渋することが多い.症例は79歳の女性.DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤に対して,胸部下行大動脈置換術後の外来経過観察中,穿刺部からの止血困難などの症状出現と血液検査でDICの悪化を認めたため入院加療の方針となった.ヘパリン投与により血液検査上DICの改善を認めていたが,突然右大胸筋内の出血が出現した.ドレナージ止血術を行った後も持続的な出血が続いたために,凝固第13因子(FXIII/13)製剤を投与したところ,止血とDICの改善を認めた.後日出血時に採取した血液検査にて,FXIII/13が46%と低値であったことが判明した.解離性大動脈瘤に合併するDICの症例で出血を認め,その背景にFXIII/13の低下が関与し,治療にはFXIII/13製剤が有効であった症例を報告した.

  • 西本 隆亨, 盆子原 幸宏, 東 隆, 村上 弘典
    2018 年 27 巻 3 号 p. 251-254
    発行日: 2018/06/28
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル フリー

    孤立性内腸骨動脈瘤は希な疾患であり,治療法に関し検討の余地がある.症例は84歳男性,右内腸骨動脈瘤を認め当院紹介となった.精査の結果,右外腸骨動脈が完全閉塞し,右内腸骨動脈瘤の末梢より右大腿深動脈への側副血行路を認めた.症例は呼吸機能障害もあり,側副血行路を温存し内腸骨動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行した.内腸骨動脈瘤の治療法にはさまざまなものがあり,症例に応じて慎重に検討する必要があると考えられる.

  • 増田 暁夫, 熊田 佳孝, 水野 祐介, 中村 康人
    2018 年 27 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    症例は78歳の男性.原動機付き自転車を運転中に軽自動車と衝突し救急搬送された.全身造影CTを施行したところ,大動脈弓部から下行大動脈にかけての大動脈損傷,造影剤の血管外漏出を伴う小腸間膜損傷,左大腿骨骨頭骨折を認めた.内膜の亀裂を左総頸動脈起始部に認め,且つ,大動脈弓部から下行大動脈にかけての仮性瘤を認めたため,緊急でオープンステントグラフトを用いた弓部置換術を行う方針とし,致死的出血を抑えるため,腹部の止血術を同時に行った.リハビリテーションを長期間要したが,術後97日目に自宅退院となった.多臓器損傷を伴う外傷性弓部大動脈損傷に対して,手術によって救命し得た1例を経験したので報告する.

2015年JCLIMB年次報告
  • 日本血管外科学会JCLIMB委員会, NCD JCLIMB分析チーム
    2018 年 27 巻 3 号 p. 155-185
    発行日: 2018/05/29
    公開日: 2018/05/29
    ジャーナル フリー

    2013年から日本血管外科学会は,我が国の血管外科医により行われている重症下肢虚血(critical limb ischemia; CLI)診療の現状を明らかにし,その結果を現場の医師に還元することで,医療の質の向上に貢献することを目的として,全国規模のCLI登録・追跡データベース事業を開始した.このデータベースは,非手術例も含むCLI患者の背景,治療内容,早期予後,および治療後5年までの遠隔期予後を登録するもので,JAPAN Critical Limb Ischemia Database(JCLIMB)と呼称し,NCD上に設置されている.2015年は92施設が1138肢(男性796肢:70%,女性342肢)のCLIを登録し,ASOが全体の98%を占めた.この年次報告書では,登録肢の背景,虚血肢状態,治療,治療後1カ月の早期予後を集計し報告する.

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