2018 年 27 巻 4 号 p. 327-331
大腿膝窩動脈領域完全閉塞病変に対しては,自家静脈バイパス術が第一選択とされるが,静脈条件が不良である場合には難渋する.今回われわれはRing-stripperを用いた浅大腿動脈血栓内膜摘除術と自家静脈バイパス術を併用した1症例を経験した.症例は,67歳男性.左下肢安静時痛を認め,当院受診となった.下肢動脈CTA検査にて,左浅大腿動脈起始部から膝窩動脈3分枝直上にまで及ぶ完全閉塞を認めた.膝窩部左大伏在静脈は静脈条件良好であったが,その他の伏在静脈は壁肥厚を伴った狭窄病変が散在し,条件不良であった.左大伏在静脈を全長にわたってグラフトとして使用することは困難であると判断し,浅大腿動脈領域は血栓内膜摘除術を,膝上膝窩動脈から後脛骨動脈にかけては自家静脈バイパス術を施行した.術後1年目の下肢動脈CTA検査にて狭窄病変を認めたため,血管拡張術を追加施行した.術後2年経過しているが,症状もなく経過している.