2019 年 28 巻 4 号 p. 297-301
孤立性腹腔動脈解離の1手術例を経験したので報告する.症例は48歳男性.突然の上腹部痛で発症し,造影CTで腹腔動脈解離を診断し保存的治療で経過観察を行っていたが,発症後3カ月目のフォローアップCTで,腹腔動脈瘤の囊状化と拡大のため,侵襲的治療適応と判断した.手術は腹部正中切開で開腹アプローチし,腎動脈下腹部大動脈より脾動脈と総肝動脈へ大伏在静脈でバイパスを行い,動脈瘤は切除した.術後経過は良好で,第15病日に退院した.術後造影CTでバイパスの開存を確認し,肝臓・脾臓を含む腹部臓器灌流異常は見られなかった.現在,とくに問題なく通院観察している.孤立性腹腔動脈解離は比較的稀であり,多くは保存的治療の対応となるが,侵襲的治療が必要になる場合があり,その際の治療法選択では,症例ごとに最適な方法を選択することが重要と思われた.