2021 年 30 巻 2 号 p. 63-67
11歳男児.機能性単心室および体心室流出路障害に対して乳児期のノーウッド手術を経て,2歳で心外導管型TCPCフォンタン手術に到達.11歳時のカテーテル検査で遺残大動脈縮窄を認めていたため手術適応となった.造影CT検査では腕頭動脈分岐後より低形成弓部となり,左鎖骨下動脈分岐後に最小径5 mmとなり,狭窄後拡張を認めていた.手術は胸骨正中切開,部分体外循環,心拍動下に傍右房経路で上行–下行大動脈バイパス手術を施行した.術後は合併症なく,順調に経過した.遺残大動脈縮窄症に対する上行–下行大動脈バイパス手術のメリットは反回神経傷害回避,呼吸器合併症の軽減,超低体温循環停止などの高侵襲な補助循環の回避がある.しかし食道損傷,横隔神経損傷,脳血流・冠血流の盗血現象など特有なデメリットがある.また患児の成長に伴う人工血管のサイズミスマッチの問題点が考慮され,遠隔期フォローが必要である.