2021 年 30 巻 5 号 p. 273-277
症例は57歳,男性,左上肢不全麻痺を主訴に救急要請.他院で脳梗塞の診断でrt-PAを2400万国際単位投与後に急性A型大動脈解離が発覚し当院に紹介となった.造影CTでは頸部3分枝が解離しており,右総頸動脈は真腔が狭小化していた.大動脈基部にエントリーがあり,心エコーで重症大動脈閉鎖不全症を認めた.緊急で上行弓部大動脈人工血管置換術(frozen elephant trunk併用)と大動脈弁形成術を施行した.周術期の大量トラネキサム酸投与,術中操作の工夫により,合併症はなく退院することができた.出血予防対策を十分に行うことで,rt-PAが投与された場合においても可及的早期に解離した頸部分枝を再建し,血流の再開を行うことで神経学的な改善を含めた救命ができる可能性が示唆された.