日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
30 巻, 5 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
症例
  • 齋藤 真人, 山﨑 琢磨, 田辺 友暁, 栃木 秀一, 建部 祥, 丁 毅文
    2021 年30 巻5 号 p. 273-277
    発行日: 2021/09/03
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は57歳,男性,左上肢不全麻痺を主訴に救急要請.他院で脳梗塞の診断でrt-PAを2400万国際単位投与後に急性A型大動脈解離が発覚し当院に紹介となった.造影CTでは頸部3分枝が解離しており,右総頸動脈は真腔が狭小化していた.大動脈基部にエントリーがあり,心エコーで重症大動脈閉鎖不全症を認めた.緊急で上行弓部大動脈人工血管置換術(frozen elephant trunk併用)と大動脈弁形成術を施行した.周術期の大量トラネキサム酸投与,術中操作の工夫により,合併症はなく退院することができた.出血予防対策を十分に行うことで,rt-PAが投与された場合においても可及的早期に解離した頸部分枝を再建し,血流の再開を行うことで神経学的な改善を含めた救命ができる可能性が示唆された.

  • 平田 昌敬, 薦岡 成年, 内田 直里
    2021 年30 巻5 号 p. 279-282
    発行日: 2021/09/03
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    遺残坐骨動脈はまれな先天異常であり,頻度は0.025~0.05%と報告されている.今回われわれは,遺残坐骨動脈閉塞による急性増悪に対する薬物・運動療法での改善例を経験したので報告する.症例は72歳,女性.右下肢の冷感,感覚麻痺を認めるようになったため受診.右大腿動脈の触知は認めたが,右膝窩動脈,足背動脈,後脛骨動脈の触知は認めなかった.Ankle brachial index(ABI)は右0.58,左1.17であった.造影CTにて両側遺残坐骨動脈および右遺残坐骨動脈および膝窩動脈,前脛骨動脈閉塞を認めた.後脛骨動脈,腓骨動脈は側副血行により造影されていた.以上より完全型遺残坐骨動脈の慢性閉塞の急性増悪と診断.安静時疼痛は認めず,薬物・運動療法を施行した.徐々に虚血症状は改善し,造影CTでも血流の改善を認めた.

  • 高橋 和代, 北川 敦士, 渡邊 将生, 長尾 俊彦
    2021 年30 巻5 号 p. 283-286
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    左人工膝関節置換術後の膝窩仮性動脈瘤に対しVIABAHNステントグラフト留置術が奏功した1例を経験したので報告する.症例は,75歳女性.左下肢閉塞性動脈硬化症,糖尿病,高血圧,脂質異常症,脂肪肝,高度肥満(BMI 41.8),慢性腎不全の既往あり.仮性動脈瘤は径25 mm×29 mm,左膝窩動脈本幹内側後方に認めた.外科的治療は高度肥満であり,動脈へのアクセスは困難と考え,VIABAHNステントグラフトにて血管内治療を施行.術中,術後問題なく経過,術1年後の現在,瘤の再発およびステントグラフト破損なく開存,良好に経過している.

  • 三谷 和大, 平賀 俊, 廣瀬 友亮, 鹿庭 善夫, 玉田 沙也香, 谷口 繁樹
    2021 年30 巻5 号 p. 287-290
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩静脈瘤は稀な疾患であるが,肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症を起こしうる疾患である.われわれは肺血栓塞栓症を契機に発見された膝窩静脈瘤に対し,再発予防のため静脈パッチ形成術を行った一例を経験したので報告する.症例は62歳,男性.左膝窩部の疼痛を自覚し,数日後労作時呼吸困難と強い胸痛を自覚したため救急要請され,当院救命センターに搬送された.胸部造影CTにて肺血栓塞栓症と診断され,血栓溶解療法が開始された.また下肢造影CTにて左膝窩静脈瘤を指摘され,手術加療目的に当科紹介となった.全身麻酔下に左膝窩背側アプローチで手術を行った.瘤内部には多量の陳旧性血栓が存在した.瘤化組織を切除すると,残存した正常組織が少なかったため,下腿末梢で小伏在静脈を採取し,静脈パッチ形成術を施行した.術後静脈内血栓の再発をみとめず,良好な結果を得ることができた.

  • 比嘉 章太郎, 永野 貴昭, 安藤 美月, 喜瀬 勇也, 仲榮眞 盛保, 古川 浩二郎
    2021 年30 巻5 号 p. 291-294
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    急性B型解離の偽腔破裂は致死的疾患で救命が最優先される.しかし対麻痺を発症するとADLが低下し予後にも影響する.今回われわれは術中に運動誘発電位(MEP)をモニタリングし,MEP変化に対応することで対麻痺を回避し得た1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.近位下行大動脈のエントリー近傍の偽腔より縦隔内にextravasationを認めた.ステントグラフト留置(Zone2~Th8)直後にはMEP変化はみられなかった.偽腔血流制御の手技中,ステント展開後から51分後からMEPが低下し,78分後にはMEPが消失した.平均血圧を上昇させてもMEPが回復しなかった.左鎖骨下動脈へベアステント留置し順行性血流を確保したところ,MEPの回復がみられ,術後も対麻痺は認めなかった.緊急手術であっても可能な限りMEPをモニタリングし,MEP変化に適切に対処することで対麻痺発症の予防に努めることが肝要である.

  • 和田 健史, 浦下 周一, 上木原 健太, 坂口 健, 平山 亮, 鈴木 龍介
    2021 年30 巻5 号 p. 295-297
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は39歳男性,左上肢の脱力感および痺れを主訴に受診.CT検査にて異常な左第1肋骨が左第2肋骨に付着し,鎖骨と第1肋骨の間で左鎖骨下動脈が挟まれて瘤化しており,動脈性胸郭出口症候群の診断に至った.また左上腕動脈も血栓閉塞しており,血栓除去術を行ったのち,左鎖骨下動脈の人工血管置換術を施行した.異常な第1肋骨と左鎖骨下動脈瘤周囲は強固に癒着しており,切除は困難であったため狭窄部位を避けて人工血管を通して経路変更による血行再建を行った.胸郭出口症候群における異常な肋骨の切除は時に神経損傷や胸膜損傷等の合併症を来すことがあり,本術式は安全かつ有効な治療の選択肢となり得るため報告する.

  • 山崎 一也, 小島 貴弘, 藪 直人, 南 智行, 矢野 善己, 磯田 晋
    2021 年30 巻5 号 p. 299-302
    発行日: 2021/10/06
    公開日: 2021/10/06
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は79歳女性.2020年2月路上で転倒し,右手の冷感痺れを訴えて近医搬送された.右上腕骨近位部骨折と,造影CTによる右腋窩動脈閉塞の診断で受傷3日目に当院に転院搬送された.受傷6日目に上腕骨の観血的整復固定術と右腋窩動脈の血行再建手術を施行した.術中所見では,腋窩動脈は内腔の血栓閉塞の他に,外膜の損傷を伴っていたが損傷部周囲に多量血腫はなかった.外膜損傷した動脈の中枢側末梢側を結紮し,自家大伏在静脈グラフトで腋窩動脈–上腕動脈間バイパス術を行った.上腕骨近位部骨折に伴う動脈損傷の報告には,動脈の内膜損傷に伴う血栓閉塞と,骨片による外膜損傷で起きる出血,仮性動脈瘤形成の二種類があるが,本症例では内膜損傷と外膜損傷が併存しており内膜損傷による血栓閉塞が先行しその後異時性に外膜損傷を来したものと思われた.

  • 藤井 弘敦, 福田 智, 奈良原 裕, 村田 升, 尾頭 厚
    2021 年30 巻5 号 p. 303-306
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/23
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈性血管瘤は頭部や下肢に見られ,大部分は無症状である.しかし,膝窩静脈静脈性血管瘤は致死的な肺血栓塞栓症の原因となるが,その症例報告は少ない.症例は既往のない21歳女性,自宅で意識消失し救急車で搬送された.精査で肺血栓塞栓症と診断された.心肺停止になったが心肺蘇生を行い自己心拍再開,同時に血栓溶解療法を行い一命を取り留めた.下肢造影CTで左膝窩静脈の内腔に血栓を伴う25 mm大の紡錘状の静脈性血管瘤が認められ,塞栓源と考えられた.深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症の再発予防目的に当院当科に紹介となった.一時的下大静脈フィルターを留置し,縫縮術を施行した.術後1年以上経過するが,瘤の再発,深部静脈血栓症は起きていない.膝窩静脈静脈性血管瘤は繰り返す致死的な肺血栓塞栓症の原因となることがあり,抗凝固療法下でも肺血栓塞栓症の再発率も高いため,膝窩静脈静脈性血管瘤の診断後は早期の外科治療が必要となる.

  • 神藤 由美, 西巻 博, 深田 睦
    2021 年30 巻5 号 p. 307-312
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル オープンアクセス

    Endovascular aortic repair(EVAR)後のtype IIIb endoleak(EL)の診断は造影computed tomography(CT)だけでなく術中造影でも難しい.今回われわれはAFX2に対する追加治療中造影でtype IIIbと同定し,relining technique(RT)で治療し得たので報告する.症例は68歳,男性.腹部大動脈瘤切迫破裂に対しAFX2を用いてEVAR施行も,術後CTでtype Ib ELを認め内腸骨動脈塞栓と脚追加を要した既往がある.初回術後14カ月後のCTで瘤再拡大とAFX2のmigration, AFX2中枢側と分岐部周囲の2カ所に造影剤貯留を認めた.Type Ia ELの診断とIIIb EL疑いで,まず中枢側へカフ追加しtype Ia EL消失させ,残存する末梢側のELを造影でtype IIIbと同定し,RTで治療し得た.

  • 近藤 健介, 磯田 竜太郎, 森田 一郎
    2021 年30 巻5 号 p. 313-317
    発行日: 2021/10/21
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は16歳男性.左脛骨骨折で他院入院6日目の手術時に,術前から発生していたと思われる左下腿コンパートメント症候群の増悪から左下肢急性動脈閉塞症を併発したため,筋膜切開施行されたが軽快せず,手術中止し当科へ救急搬送となった.血行再建は血栓除去と血管内治療で施行し,Golden Time内に前脛骨動脈の血流再開に成功した.しかし,術前から発生していたコンパートメント症候群にて筋肉の末梢循環不全が改善せず,広範囲の筋肉壊死に繋がった.その後整形外科と集学的治療を粘り強く施行し,救肢に成功した.

  • 籠島 彰人, 横山 斉
    2021 年30 巻5 号 p. 319-324
    発行日: 2021/10/21
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は69歳男性.当院脳神経外科で頸動脈ステント留置術を予定されたが,術前に判明した左総腸骨動脈囊状瘤に対する治療目的に当科へ紹介となった.併存疾患による合併症リスクから血管内治療を検討され,局所麻酔下にベアメタルステントを用いたstent assisted techniqueによるコイル塞栓術を行った.術後造影では瘤内の造影所見は消失し,合併症なく術後2日目に退院となった.ステント併用の瘤内コイル充填による治療は主に脳動脈瘤に対して行われることが多く,総腸骨動脈領域の囊状瘤に対する同治療の報告はない.一般的にはステントグラフトを用いた血管内治療が選択されることが多いが,デバイスの適応や側副血行路への影響など制限が生じる場合がある.本例で行ったベアメタルステントを用いた手技は内腸骨動脈血流を温存し得るひとつの方法として有用であると考えられた.

  • 古賀 清和, 吉戒 勝, 三保 貴裕, 天本 宗次郎
    2021 年30 巻5 号 p. 325-328
    発行日: 2021/10/28
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    足背動脈瘤は動脈瘤の中でも非常に稀である.今回,敗血症治癒後に発生した足背動脈瘤に対して瘤切除および動脈再建を行い,良好に経過したので報告する.症例は48歳,男性.未治療のアトピー性皮膚炎からMRSA敗血症となり胸腰椎硬膜外膿瘍,腰椎化膿性脊椎炎を併発した.左足関節の痛みが出現したが単純CTにて異常はなかった.抗菌薬の投与と硬膜外膿瘍および化膿性脊椎炎に対するドレナージ術にて,感染は2カ月で治癒した.感染治癒から2カ月後,左足背部に違和感を伴う拍動性腫瘤を自覚した.超音波検査にて33×17×27 mm大の囊状左足背動脈瘤と診断し,局所麻酔下に瘤を切除し端々吻合にて足背動脈を再建した.病理組織学的に動脈瘤は仮性瘤で,明らかな感染や炎症を示唆する所見は認めなかった.打撲や動脈穿刺などの外傷の既往はなく,臨床経過から敗血症を契機に発生した感染性動脈瘤と診断した.

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