2022 年 31 巻 4 号 p. 201-208
若年で閉塞性動脈硬化症の危険因子がない膝窩動脈狭窄・閉塞症例では,非動脈硬化性病変として膝窩動脈捕捉症候群(popliteal artery entrapment syndrome; PAES)と外膜囊腫(adventitial cystic disease; ACD)を考慮する必要がある.PAESは腓腹筋内側頭に対する膝窩動脈走行の先天的異常によるもので,腓腹筋内側頭あるいは異常線維束により膝窩動脈が捕捉される.解剖学的な異常を伴うタイプでは手術が第一選択となる.ACDの正確な原因は不明であり,囊胞はゼラチン状のムコイド物質で満たされている.閉塞ではなく膝窩動脈狭窄を示すことが多いが,膝窩動脈血栓性閉塞の合併または広範な動脈変性の場合は切除的治療法が望ましい.