2022 年 31 巻 4 号 p. 259-262
陥入爪に対するフェノール法施行後,左第1趾が壊死となり治癒に難渋した症例を経験した.症例は,59歳男性.既往歴は1996年糸球体腎炎のため透析導入,左大腿–右大腿動脈バイパス.家族歴に特記事項なく,飲酒・喫煙もない.2020年3月に左第1趾陥入爪に対してフェノール法施行.治癒遅延で5月当院受診.感染と壊死にて7月下旬左第1趾切断.6日後に左下肢動脈への血管内治療受け退院するも治癒不全にて9月下旬に再入院.大動脈弁狭窄症への弁置換術を他院で受け,10月下旬に再々入院.入院当日意識消失あり,ペースメーカー植込みを行った後,左大腿動脈–足背動脈バイパス.11月中旬左第1趾腐骨除去.入院中,直腸潰瘍より出血し止血術施行,12月中旬,陥入爪処置から9カ月後治癒退院.フェノール法による陥入爪の処置は簡便・低侵襲で普及しているが,虚血が疑われる症例では慎重に行うべきである.