日本血管外科学会雑誌
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症例
腹部大動脈瘤人工血管置換術10年後に下腸間膜動脈からの出血により被覆瘤壁が再拡大した1例
若松 豊 伊藤 昌理
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 31 巻 6 号 p. 347-351

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抄録

腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術10年後に被覆瘤壁が突然再拡大を認めたため手術を施行した症例を報告する.症例は81歳,男性.71歳時に腹部大動脈動脈瘤に対する人工血管置換術を施行した.3週間後のCT検査で被覆瘤壁は径51 mmであり余剰瘤壁の縫縮が不十分であったと思われたが瘤内は血種で満たされ血種の造影効果を認めず,腹部血管超音波検査でも瘤内に向かう異常血流を認めなかった.1年後には血種はほぼ吸収され被覆瘤壁は収縮し,以降長期間径35 mmの大きさを維持したが,初回手術10年後に径61 mmへと突然拡大し手術を施行した.瘤内の比較的新鮮な血栓を除去し,出血の原因が下腸間膜動脈であることが判明し止血した後,余剰瘤壁を切除し縫縮した.人工血管置換術時に適切かつ十分な手術がなされていたとしても大動脈分枝の結紮糸が外れ遠隔期に再出血により瘤壁が拡大する可能性があることに注意を傾ける必要がある.

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