末梢動脈疾患,下肢動静脈瘻,下肢静脈弁機能不全は,いずれも一般的な下肢脈管病変だが,三病変の同肢合併は極めて稀である.症例は79歳男性,左下肢の疼痛,血管膨隆,皮膚変色を呈し,CT検査で左大腿動脈閉塞,腓骨動脈から大伏在静脈の動静脈瘻を認めた.まず末梢動脈疾患への血管内治療を行ったが,足関節上腕血圧比の正常化を得たものの,皮膚組織灌流圧や下肢症状の改善は認めなかった.主因は微小動静脈瘻を介した大伏在静脈への盗血および静脈弁機能不全と思われ,大伏在静脈へのシアノアクリレートを用いた血管内塞栓術や残存動静脈瘻へのコイル塞栓術を追加することで下肢の血行改善と症状消失を得た.本症例では下肢脈管複合病変による複雑な血行動態や症状変化のため,動静脈の段階的血管内治療が効果的であった.とくに伏在静脈に還流する微小動静脈瘻に対しては,伏在静脈の全長治療が可能である下肢静脈瘤治療用の血管内塞栓術が有用であった.