2022 年 31 巻 6 号 p. 369-373
症例は70歳代男性.主訴は呼吸困難.直腸癌に対して腫瘍切除および人工肛門作成,肺転移に対して肺切除が行われていた.突然呼吸苦を自覚し,前医を受診したところ造影CTで肺動脈,右房内に血栓,下肢静脈エコーで大腿静脈に血栓を認めた.深部静脈血栓症による肺動脈塞栓症と診断され当院へ搬送となった.来院時,心エコーで右心負荷,右房内に浮遊血栓を認めたため,緊急手術の方針とした.手術は,胸骨正中切開でアプローチし人工心肺を使用し心停止下に右房,主肺動脈を切開し血栓を摘除した.術後からワルファリンの内服を開始した.術後,造影CTで肺動脈に血栓は認めず,術後24日独歩退院となった.退院から6カ月後,新たな肺転移に対して肺部分切除を行った.術後4年,血栓症を認めていない.担癌患者に発症した肺動脈塞栓に対し,外科的血栓除去で良好な経過を得た症例を報告する.