2023 年 32 巻 2 号 p. 141-146
リンパ浮腫はリンパ系の機能障害により生じた浮腫であり,その成因により明らかな誘因を認めない原発性と外因性の誘因を有する続発性に分けられる.主な症状は浮腫と重だるさ,皮膚硬化・リンパ囊胞,リンパ漏・乳頭腫などの皮膚変化,反復性の蜂窩織炎などであり,不可逆的かつ進行性であることも多く,QOLを大きく低下させる.診断はリンパシンチグラフィーやICG蛍光リンパ管造影などリンパ流を評価できる画像検査により行われ,線状陰影(Linear Pattern)と皮膚逆流現象(Dermal Backflow)が主要な所見である.治療は保存治療と外科的治療に分けられる.保存治療は弾性着衣による圧迫療法,運動療法,用手的リンパドレナージ,スキンケアの4つからなる複合的理学療法(Complex Physical Therapy: CPT)が行われる.体積減少や維持効果,蜂窩織炎予防効果などで有効性のエビデンスが報告されており治療のgold standardとなっているが,対症療法であり障害されたリンパ流の改善は見込めない.一方外科的治療はリンパ管静脈吻合や血管柄付きリンパ管移植がその代表的なものであり,新しいリンパ流を作成してリンパ浮腫の根本原因であるリンパ流の障害を改善できる.体積減少効果,蜂窩織炎予防効果,QOL改善などが報告されており有効性が期待されているが,症例集積研究が多いため今後エビデンスレベルの高い研究が求められている.本邦では保存療法と外科療法を組み合わせて治療を行うことが多いが,リンパ浮腫は難治であり完治となる例は少なく,いかに治療成績を向上していくかが課題となっている.