日本血管外科学会雑誌
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講座
急性大動脈解離の診断
末松 義弘
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 32 巻 2 号 p. 93-100

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抄録

急性大動脈解離(AAD)は3大致死的循環器系疾患(急性心筋梗塞,急性肺動脈血栓塞栓症,AAD)の一つであり,これらの3大疾患の診断および治療には,迅速性が要求される.その発症から診断までの時間をいかに短縮できるかが予後に大きく影響する.発症後の死亡率は1–2%/hourといわれており,またStanford AのAADでは保存的にみた場合の死亡率は24時間で20%,48時間で30%,7日で40%,1カ月で50%と報告されている.AADにおいては緊急手術が施行されれば,その予後は良好であり,診断と治療が遅れれば,上述のように心タンポナーデや大動脈破裂など致死的転帰を辿る.AADは,急性心筋梗塞,急性肺動脈血栓塞栓症とは異なり,内科医が行う血管内治療や内科治療のみでは良好な救命率が得られず,救急診療科,循環器内科,心臓血管外科,麻酔科を含めた緊急治療のチームが必要であり,また必ずしも典型的な胸痛症状で来院するとは限らず,来院時ショックバイタル症例にもしばしば遭遇し,AADの診断に際しても各種モダリティーを駆使し,これらチームの密な連携体制の構築が必須と考えられる.本稿にて急性大動脈解離の診断を主に述べる.

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