2023 年 32 巻 6 号 p. 423-427
症例は52歳男性.糖尿病を診断されたが放置していた.右鼠径部の自発痛と発赤を認め,血液検査で白血球数高値とHbA1c高値であった.造影CTで右総大腿動脈周囲に異常軟部陰影を認めた.右大腿蜂窩織炎,感染性総大腿動脈瘤と診断し,抗生剤投与と糖尿病治療を開始した.入院8日目に右下肢に浮腫が出現した.造影CTで総大腿動脈は仮性瘤化し大腿静脈を圧排していた.血糖値のコントロールが不良で感染の活動性も高いため,血糖値のコントロールを強化してから手術の方針とした.蜂窩織炎が改善した後,右鼠径部の疥癬症の診断がつき,隔離治療期間のため手術時期の延期を余儀なくされた.隔離期間終了後に術前CTを撮像し,右大腿静脈に血栓を認めた.入院35日目に瘤切除術,右外腸骨動脈–浅大腿動脈バイパス術,静脈結紮術を行った.経過良好で術後28日目に自宅退院した.