日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
32 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
症例
  • 金本 亮, 赤岩 圭一, 中村 克彦, 尾田 毅
    2023 年 32 巻 6 号 p. 417-421
    発行日: 2023/11/12
    公開日: 2023/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は68歳女性.嗄声があり,近医で胸部CT異常影,上部消化管内視鏡検査での食道壁外圧排所見を指摘され,当院紹介受診となった.造影CTで右大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈を伴うKommerell憩室と診断した.憩室のサイズは憩室起始部径30 mm,憩室先端から対側大動脈壁間距離52 mmであった.自覚症状があり,憩室径も大きく手術適応とした.まず,左総頸動脈–左腋窩動脈バイパス術を行い,Gore TAG Conformableアクティブコントロールシステム37 mm径–150 mm長を挿入し,右鎖骨下動脈をカバーするように位置調整した.大動脈弓部の角度は急峻であり,小弯側に追従するようアンギュレーションをかけ,展開した.右鎖骨下動脈起始部にステントを挿入し,右鎖骨下動脈血流を温存した(chimney法).左鎖骨下動脈はコイル塞栓を行い,術後造影CTでは明らかなエンドリークなく,嗄声も改善した.術後2年で瘤径拡大は認めず良好に経過している.

  • 杉田 洋介, 原 寛幸, 矢野 啓太, 瀧本 真也, 金光 尚樹
    2023 年 32 巻 6 号 p. 423-427
    発行日: 2023/11/12
    公開日: 2023/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は52歳男性.糖尿病を診断されたが放置していた.右鼠径部の自発痛と発赤を認め,血液検査で白血球数高値とHbA1c高値であった.造影CTで右総大腿動脈周囲に異常軟部陰影を認めた.右大腿蜂窩織炎,感染性総大腿動脈瘤と診断し,抗生剤投与と糖尿病治療を開始した.入院8日目に右下肢に浮腫が出現した.造影CTで総大腿動脈は仮性瘤化し大腿静脈を圧排していた.血糖値のコントロールが不良で感染の活動性も高いため,血糖値のコントロールを強化してから手術の方針とした.蜂窩織炎が改善した後,右鼠径部の疥癬症の診断がつき,隔離治療期間のため手術時期の延期を余儀なくされた.隔離期間終了後に術前CTを撮像し,右大腿静脈に血栓を認めた.入院35日目に瘤切除術,右外腸骨動脈–浅大腿動脈バイパス術,静脈結紮術を行った.経過良好で術後28日目に自宅退院した.

  • 杉本 聡, 山下 知剛, 安達 昭, 山内 英智
    2023 年 32 巻 6 号 p. 429-432
    発行日: 2023/11/22
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    気管支動脈瘤は稀な疾患であり,選択的気管支動脈造影検査の1%未満で認める.瘤径によらず破裂の危険性が高く,無症状でも診断され次第治療が必要となる.症例は78歳,女性.咳嗽を主訴に受診し,CTで径25 mmの気管支動脈瘤を認めたため,胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)による治療を選択した.流出血管の塞栓を試みたが流入血管が細いためカニュレーションできず,TEVAR単独で流入血管を閉鎖した.術後合併症なく,7日目に撮像した造影CTでエンドリークは認めず,瘤内は血栓化されていた.フォローのCTで動脈瘤は徐々に縮小し,術後4年目に径14 mmまで縮小し,11年目現在,同径のまま経過している.気管支動脈瘤の血管内治療において,流出血管の塞栓とTEVARによる流入血管の閉鎖の組み合わせがより確実である.しかし流出血管の塞栓が困難な場合でもTEVARのみで遠隔期まで良好な経過が得られる可能性がある.

  • 木原 一樹, 近藤 庸夫, 島田 ゆうじ, 大上 賢祐
    2023 年 32 巻 6 号 p. 433-436
    発行日: 2023/11/22
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    88歳男性,偶然発見された胸部大動脈瘤に対して胸部大動脈瘤ステントグラフト内装術を施行した.大腿動脈および外腸骨動脈アプローチを試みたが挿入ができず,開腹での経大動脈アプローチにて完遂した.術後鼠径部に急性リンパ管炎およびリンパ浮腫を発症し,広範囲の皮膚および皮下組織壊死を来し,デブリードマンおよび植皮術が必要となった.大腿動脈および外腸骨動脈の二カ所切開が急激なリンパ浮腫の原因と考察した.このまれな合併症について考察を加えながら報告する.

  • 水落 理絵, 浅見 冬樹, 岡本 竹司, 高橋 聡, 山本 和男, 吉井 新平
    2023 年 32 巻 6 号 p. 437-441
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Short neckである腹部大動脈瘤への手術介入においては,大動脈瘤の性状を十分に考慮し術式を検討すべきである.症例は78歳男性.3カ月前より右腰痛および右大腿部痛を自覚していた.CTで右腎動脈直下の腹部大動脈から右側および背側に拡大する径90 mm大の仮性動脈瘤を認め,腰椎への侵食が確認された.血行動態は安定しておりchronic contained rupture(CCR)と診断した.開腹既往があり,腹部大動脈瘤に感染がなく,ステントグラフト内挿術(EVAR)の方針とした.傍腎動脈腹部大動脈瘤のため,左腎動脈にはChimney法を,右腎動脈には開窓作成およびbranch挿入を用いた腎動脈への血行再建を行った.術後に腎機能障害を来さず,腰痛および大腿部痛は消失した.開腹既往をもつshort neck症例に対し分枝再建法を複数組み合わせたEVARが有用であった.

  • 小坂 淳生, 橋本 宗敬, 河村 圭一郎, 堀井 晋一良, 佐藤 博子, 玉手 義久
    2023 年 32 巻 6 号 p. 443-447
    発行日: 2023/12/17
    公開日: 2023/12/17
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】静脈性血管瘤は限局的拡張病変で,稀な疾患である.肺塞栓症を契機に発見された膝窩静脈血管瘤を報告する.【症例】68歳,女性.既往歴・内服歴はない.2妊2産.血栓性素因の家族歴なし.数日前からの動悸,息切れを主訴に受診した.血圧79/54 mmHg,脈拍129回/分,SpO2 85%,呼吸数28回/分,体温36.6°C,下肢の浮腫や表在静脈の拡張は認めず.造影CT検査で両側肺動脈内の血栓と,右膝窩静脈に血栓を伴う直径30 mmの囊状の静脈性血管瘤を認めた.肺塞栓症に対して2週間の抗凝固療法を行ったところ,肺動脈内の血栓は消失し呼吸症状も改善した.その後膝窩静脈血管瘤に対して縫縮術を行った.術後6カ月間の抗凝固療法を行った.2年経過し再発は認めない.【結論】膝窩静脈血管瘤は肺塞栓症を合併することが報告されており,早期の手術治療が必要と考える.

  • 佐藤 雅信, 永澤 園子, 山田 章貴, 森本 喜久, 顔 邦男, 麻田 達郎
    2023 年 32 巻 6 号 p. 449-453
    発行日: 2023/12/17
    公開日: 2023/12/17
    ジャーナル オープンアクセス

    血管平滑筋肉腫は稀で予後不良といわれている.とくに大腿静脈原発の報告例は少ない.今回われわれは右大腿静脈原発平滑筋肉腫の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.症例は74歳女性.右下肢腫脹を認め深部静脈血栓症疑いで当科紹介となった.右大腿鼠径部下に鶏卵大,非拍動性腫瘤性病変を触知,血管超音波検査にて35×31×51 mm長の腫瘤を認め,内腔が血栓化した大腿静脈静脈性血管瘤が疑われた.CT検査やMRI検査で右大腿静脈内の腫瘍が疑われたが,神経原性腫瘍との鑑別診断として挙げられた.手術所見では,腫瘤は大腿静脈と連続性があり,神経原性腫瘍は否定された.大腿静脈の腫瘍と診断され,完全切除を行った.病理検査で血管由来の大腿静脈原発性平滑筋肉腫との診断を得た.退院後は当院血液腫瘍内科とともに経過を観察していた.術後4カ月後に多発性肝転移と多発性肺転移を認め,化学療法を開始された.術後2年経過した現在も生存中である.

  • 外田 洋孝, 廣岡 茂樹, 折田 博之
    2023 年 32 巻 6 号 p. 455-461
    発行日: 2023/12/17
    公開日: 2023/12/17
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩動脈外膜囊腫は,外膜に貯留したコロイド様物質が内腔を圧迫することにより生じる非動脈硬化性の閉塞性動脈疾患である.外科的治療介入の待機中に自然寛解した3例を経験した.症例は56歳,34歳,72歳の男性で,間歇性跛行にて発症した.画像診断では,半月状の外膜囊腫により膝窩動脈内腔が圧迫され狭窄ないしは閉塞所見を呈していた.3例中2例で,膝窩動脈周囲の多房性囊腫と膝関節腔との交通を認めた.全例で外科的血行再建を予定したが,待機中に症状が自然消失したため保存的治療にて経過観察を行った.発症から自然寛解までの期間は各々約3カ月,約1カ月,13日であった.外膜囊腫と膝関節包の交通を認めた1例で症状の自然寛解から8カ月後に下肢虚血症状の再燃を認めたが,約1週間の抗凝固療法の後,再度寛解に至った.自然寛解した膝窩動脈外膜囊腫の自験例3症例について文献的考察を含め報告する.

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