2024 年 33 巻 5 号 p. 293-297
化膿性脊椎炎と感染性腹部大動脈瘤の関連は知られているが,化膿性脊椎炎を合併したステントグラフト(SG)感染の報告は稀で,起因が明確でないことが多い.今回,化膿性脊椎炎に起因する腹部SG感染の症例を経験し,良好な転帰を得たため報告する.症例は75歳男性,10年前に腹部大動脈瘤に対してEVARを行い,瘤の縮小状態を維持していた.化膿性脊椎炎と腸腰筋膿瘍,右下腿皮下膿瘍で入院,抗生剤加療を行い軽快退院したが,1カ月後に腰痛の再燃を認めた.画像検査でSG感染の診断に至り,SG抜去・リファンピシン浸漬人工血管による生理的血行再建と大網充填を行った.術後22日目に自宅退院し,現在抗生剤を服用せずに感染再燃なく経過している.SG留置状態での化膿性脊椎炎の存在は,SGへの感染伝播の恐れがあり,迅速な加療が必要である.感染が伝播した場合には,早期の根治術が望ましい.