抄録
要旨:腹腔腸間膜動脈共通幹の出現頻度は3.4%とされており,また,腹腔内臓動脈瘤の中で腹腔動脈本幹の瘤の頻度は4%とされている.稀な腹腔腸間膜動脈幹に伴う腹腔動脈瘤に対して手術を行った.症例は76 歳,男性である.CT にて上腸間膜動脈と腹腔動脈は共通幹を形成し,その共通幹より分岐する膵後面の腹腔動脈に最大径23 mm の囊状動脈瘤が見出された.手術はこの腹腔動脈瘤を空置し,腹腔腸間膜動脈共通幹より分岐する腹腔動脈起始部を離断,縫合し,上腸間膜動脈末梢から腹腔動脈末梢分岐部まで大伏在静脈を用いてバイパスした.術後1 年の現在元気である.解剖学的異常に伴う腹腔内臓動脈瘤では症例に応じた治療の選択が必要と思われた.