抄録
水域底層において分解され酸素を消費する有機物の起源を, その分解生成物である溶存無機態炭素 (DIC) の安定同位体比を用いて推定する方法は, 少量の水を用いて短期間で推定が行なえる点で実用性が高い。港湾泊地の浚渫窪地にできる無酸素水塊では, DIC濃度の上昇に従いDICの安定同位体比 (δ13C) が低下しており (R2=0.93) , 両者の関係を用いて水中の酸素を消費して分解された有機物のδ13Cを精度よく推定することができた。無酸素水塊中でpHの低下が進んでいる海域には, 従来湖沼において用いられてきたこの方法を適用できることが示された。また当該水域における内部生産有機物および陸起源有機物のδ13Cを用いてそれぞれの寄与率を求めたところ, 前者の寄与率が59~88%であった。海水交換が極めて小さいという特徴を持つ窪地は, 海域における有機物の分解過程を定量的に調べるために好適な場所と考えられた。